筑波大図書館情報メディア系・白井教授に聞く 基本方針がまず必要

 
「文書を保管し、生かすための議論を始める必要がある」と指摘する白井教授

 被災地の公文書管理に詳しい筑波大の白井哲哉教授(歴史学・アーカイブ学)に、震災文書の保全の在り方などについて聞いた。

 ―震災に関連した文書をどう考えれば良いか。
 「震災文書には、さまざまな行政文書に加え、避難所に張り出した紙なども含まれる。福島県の自治体の場合は原発事故で避難を余儀なくされ、当時の避難所がそのままになった。そのため、それらの資料が比較的残されているところが特徴になっている」

 ―震災から10年半が経過した現在、文書管理にはどのような課題があるか。
 「震災10年で『あの時どうだったのか』という証言が出てきた。その結果、ようやく文書をどうするかという話にもなってきているのではないか」
 「しかし本年度末にかけて、10年保管すると定めた文書が保管期限を迎える。これからが大事な時期と考える。『保全の10年』から、文書を活用した『検証の10年』につなげていくことも求められている」

 ―自治体は保管場所や人材の確保に悩んでいる。
 「何を捨てるか、何を残すかという議論の前に、自治体としてどのように震災文書を管理するかという基本方針を全庁的に決める必要がある。人材面では、外部から人を連れてきても良いが、職員に国立公文書館などで研修を受けてもらうこともできる。課題がある場合には、ためらわず外部に助言を求めてほしい」