「福島相双復興推進機構」 官の支援制度と 民のノウハウ融合

 

 一般に福島相双復興推進機構は、官民合同チームとも呼ばれるが、その理由は【組織図】を見ると分かる。機構は経済産業省や東電、民間企業からの出向者らで構成される「民」の組織だ。福島市の機構事務所などには、県や農林水産省などの「官」のメンバーも常駐している。この二つの組織が連携することで、官民合同チームを形成している。

 組織が発足したのは、震災と原発事故から4年余りが経過した2015年8月だった。当時は田村市都路地区や川内村で帰還が始まり、楢葉町の避難指示解除も控えていた。地域の復興には「民」のノウハウと「官」の支援制度などを組み合わせた、被災12市町村の事業者への支援が必要だというのが理由だった。

 発足当初のチームの人員は約140人で、事業者を一軒一軒訪問して事業再開を支援した。その後は、被災地で新たな課題が生じるたびに業務内容が加わった。17年4月からは営農再開支援に着手。同年9月からは事業者が事業再開・継続しやすい環境を整えるため、まちづくり支援にも取り組んだ。21年5月からは水産加工業などへの支援も始めた。現在のチームの人員は約280人となっている。

5000事業者の半数以上事業再開

 官民合同チームは、これまでに約5600の個人事業主や企業などを個別訪問した。原発事故後に創業した約500の事業者を除くと、訪問先のうち原発事故前から12市町村で事業を展開していたのは約5千事業者となる。

 チームの調査によると昨年12月末現在、約5千の事業者のうち31%が、古里に帰還して事業を再開した。避難先などに移転して事業を再開したのは21%となっており、合わせると約5割がチームの支援を受けながら事業を再開した。34%は休業中で、14%が原発事故を機に引退を決めた。

 チームは、まだ再開を決めかねている事業者への支援を継続するとともに、再開した事業者にも新商品の開発などをサポートする。

営農再開 隙間埋める支援 まちづくり 商圏を回復

 営農再開の分野は、原発事故前から県や市町村、JAなどによる支援の枠組みがあった。そのため、チームは小規模農家への訪問や販路の回復、農機具の共同所有化など、これまでの支援制度の隙間を埋めるような取り組みを進めた。楢葉町で実績を重ね、富岡町や浪江町へ支援を水平展開している。

 まちづくり支援は、原発事故によって損なわれた地域の経済的な基盤(商圏)を回復させることを目的としている。チームが自治体に協力し、楢葉町や葛尾村などで公設民営の商業施設の開設に関わった。

 また、地域振興の担い手として期待される「まちづくり会社」の設立についても、双葉町や大熊町などの4団体を支援した。

今後の課題 台風やコロナ「事業継続」正念場

 原発事故から10年が経過した現在、チームの担当者によると、古里や避難先で営業再開した事業者の「事業継続」が正念場を迎えているという。原発事故で経済的基盤が弱くなった地域に、2019年の東日本台風や昨年の本県沖地震、そして新型コロナウイルスの感染拡大が打撃を与えている。

 昨年5月からはこれまで手薄だった水産加工業者への支援に着手し、関西方面の販路回復など少しずつ成果が出ている。ただ、今後は、第1原発の処理水を海洋放出する政府方針の影響も懸念される状況だ。

 チームの活動期間は、法律などによって限られてはいない。被災地の地域経済と社会の再建を支えることがチームの使命ならば、息の長い支援継続が必要だ。