学びから飯舘への愛着 義務教育学校、田植え体験や伝統芸能継承

 
「いいたて学」の一環で、地域住民と村内で栽培された県オリジナル品種「里山のつぶ」の稲刈りに挑戦する児童ら=2021年10月

 飯舘村の義務教育学校「いいたて希望の里学園」は、児童生徒数が減少した村内の小中学校4校が統合し、2020年春に開校した。学園では豊かな教育環境と少人数教育の強みを生かして地域について学ぶ独自の教育が行われ、注目を集める。その名も「いいたて学」。児童、生徒らは地域に根ざした活動を通じ、古里についての学びを深める。

 「卒業した学生が村で就農することで活気が生まれ人口も増える」「スーパーやホームセンターができれば生活に不便さがなくなる」。2月25日、同村役場と教室をオンラインでつないで杉岡誠村長と向き合った6年生4人が、農業や商業などをテーマに村の将来について次々と提案を行った。同学園の全児童、生徒が学ぶ「いいたて学」の授業の一コマだ。

 村は東京電力福島第1原発事故で一時全域が避難区域となり、事故から11年がたとうとするいまも一部に避難区域が残る。村外で避難を続ける人も多く、児童、生徒の7割近くが村外からスクールバスで同校に通っている。「この状況では、古里への愛着がつくられないまま学校生活を送ることになる」。同学園の山田徹校長(54)はそう話し、「だからこそ、子どもたちが地域住民と直接触れ合いながら、地域の良さを学び、感じることができるいいたて学は重要な科目となっている」と言う。

 児童、生徒はこれまで、田植えや稲刈り体験、取材した村民を紹介する冊子「いいたて名人図鑑」の作製、村に代々伝わる田植え踊りの体験を通じた伝統芸能の継承など多彩な取り組みを展開してきた。目指すのは古里学習を通じた、村の歴史や伝統、文化の継承のほか、将来の村を支える人材の育成だ。

 25日の授業で杉岡村長と意見を交わした同学園6年の大島輝琉(こうりゅう)君(12)は「いいたて学は村のことを知る良いきっかけになっている。これから村の気候と農業の関係について勉強していきたい」と話した。学園での学びの先に、復興に歩む村の未来が広がり始めている。