被災12市町村、進む小・中統合 楢葉、富岡、大熊に22年春誕生

 

 東京電力福島第1原発事故で避難指示が出るなどした被災12市町村で、小中学校の統合が進んでいる。今春は、楢葉、富岡、大熊の3町で新たな統合校が誕生する。住民の避難長期化などが影響し児童、生徒の減少が続く中、各市町村教委は復興につながる新たな教育の形を模索する。

 東京電力福島第1原発事故の避難区域になるなどした被災12市町村では、いまも避難区域が残っていたり、避難指示解除後も十分に帰還が進まなかったりし、多くで児童、生徒の減少が続いている。

 こうした状況から2017(平成29)年以降、小中学校統合の動きが本格化している。同年4月、避難指示が解除された田村市都路地区の2小学校が統合し、都路小が開校した。児童減少による複式学級を避ける目的だった。その後は各地で統合が相次ぎ、この4月には楢葉町で2小学校が統合する楢葉小、富岡町で2小学校と2中学校がそれぞれ統合して富岡小と富岡中、大熊町で2小学校と大熊中が統合する義務教育学校「学び舎(や) ゆめの森」がそれぞれ開校を予定する。

 統合では、魅力ある教育環境を住民帰還につなげようと、長期的に特色ある教育に取り組める小中一貫教育校や義務教育学校を選択する町村も多い。飯舘村が2020年に開校した「いいたて希望の里学園」は、避難中に三つの小学校が合同小学校として学校行事を行ってきたことに加え、少人数でも特色ある教育ができる環境を整えるため義務教育学校を選択。川内村にも21年4月、義務教育学校「川内小中学園」が開校した。

 ただ、統合後も児童生徒数の減少は各市町村の課題となっている。川俣町山木屋地区では18年に小中一貫教育校が開校したが、再開直後の子どもの数は15人にとどまった。現在は小学校が休校状態で、町教委の担当者は「町内の児童なら誰でも通える『通学区特認制度」を広く周知し、山木屋で特色ある教育の良さを発信することで、児童、生徒数の増加につなげたい」としている。

 いまだ町内で学校を再開できないところもある。大熊町は4月に「学び舎 ゆめの森」を開校するが、1年間は会津若松市で教育を継続する。帰還は23年4月の予定だ。いわき市の仮設校舎で授業を続ける双葉町は、特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除後も当面いわき市で授業を続ける方針で、現時点では統合なども検討していない。

 児童生徒、増加転じる 帰還進む自治体

 被災12市町村では震災と原発事故後、児童生徒数が大きく減少した。避難指示などが残る町村は今も減少傾向が続くが、住民帰還が進み始めた自治体では、震災前には及ばないものの徐々に児童生徒が増加に転じている。

 このうち2019年にふたば未来学園中が開校した広野町は、震災翌年に100人を下回っていた児童生徒数が21年には258人にまで回復した。ただ、震災前の2010年との比較ではいまだ約半数にとどまっている。