「映像記録」...残す取り組み 民俗芸能を継承するふくしまの会

 
保存、継承のために本年度、映像記録の収録に取り組んだ比曽の三匹獅子舞

 「これから芸能や祭りを復活させることは今までの数倍難しいと思っている」。被災地をはじめ県内で祭りなどの保存を支援するNPO法人民俗芸能を継承するふくしまの会理事長の懸田弘訓さん(84)=二本松市=は民俗芸能の保存、継承にますます危機感を募らせる。

 それは担い手不足が大きな要因だ。保存団体会員の高齢化や、地域からの若者流出などが背景にある。特に東京電力福島第1原発事故の被災地では、会員が全国各地に避難。時間の経過とともに避難先に定着したり、継承への意欲が薄らいだりして担い手確保に苦労しているという。

 同会が2019年度に行った保存団体の実態調査では、継承者は、相双地方の45団体で震災前と比べて減少。回答団体の65%にも上った。「増減なし」と答えた団体を加え、96%が継承者問題を抱える。こうした状況を受け、震災後の活動も「休止中」28%、「廃絶」10%と再開できないものが4割弱に上り、「休止後に再開」(20%)を上回っている。

 同会は、津波で流失した道具や衣装などの新調、修理のための補助申請の代行などに取り組み、相双では、本年度までに66団体を支援した。このうち継承が難しい14団体では、映像記録の作成を進めた。本年度は、全村避難を経験した飯舘村の「比曽の三匹獅子舞」の記録に取り組み、現地での獅子舞奉納などを映像に収めた。

 懸田さんは「祭りを再開した団体には、踊り手を確保するためにNPOの会員が参加して継続しているところもある」と明かす。その上で「祭りは住民の絆を深め、古里を形作るもとになっている。踊り手の人材バンクなど、大胆な発想で継承のための手だてを考える必要がある」と提言している。