避難区域の医療再開徐々に 12市町村で32.1%、安心して生活を

 

 東京電力福島第1原発事故で避難指示が出された地域では、住民が安心して日常生活を送れるよう医療環境の再開、開設の動きが徐々に進んでいる。

 県がまとめた避難指示が出るなどした12市町村の医療機関の再開状況によると、震災直前、12市町村には病院、診療所、歯科診療所、薬局が計131カ所あった。1月1日現在では42カ所が再開または新たに開設され、再開率は32.1%。このうち双葉郡8町村は27.6%にとどまっている。

 12市町村で再開や開業した医療機関には内科や外科、整形外科などがあり、県は「一般的な診療科目は一通りそろっている」とする。一方で、人工透析を受けることができる医療機関は南相馬市といわき市に限られ、双葉郡にはないため「多様なニーズに応じるためには、診療科は足りていない」という。県は双葉郡内で休止したままの病院再開を後押しするため、設備整備の経費を補助しているほか、医師の承継への支援に取り組んでいくとしている。

 具体的な再開、開設の動きとしては、2018(平成30)年、富岡町に24時間体制で地域の中核的な医療を担う「県ふたば医療センター付属病院」が開所。昨年2月に大熊町診療所が開所したほか、翌3月にはJヴィレッジにスポーツ医療診療所「JFAメディカルセンター」が10年ぶりに再開した。楢葉町では20年に公設民営の薬局がオープン。双葉町は新年度中にJR双葉駅西口に診療所を開所する方針を示している。

 一方、県によると、相双地区では6病院が休止や廃止となっている。このうち大熊町の帰還困難区域で休止中の双葉病院はいわき市鹿島町に移転して、新病院を開院する方針だ。

 医師、厚労省が「少数県」 看護職員計画通り確保

 県内病院に勤務する常勤医師は県全体で2240人(昨年12月1日時点)で、震災前の2019人(2011年3月1日時点)から増加。県内病院に勤務する看護職員(看護師、准看護師、保健師、助産師)も1万4866人で、震災前の1万4556人と比べ増えている。

 増加傾向にある一方、県は医師数について「十分とは言えない」とする。厚生労働省は、本県を医師数が足りていない「医師少数県」としており、県内では県南、会津、南会津、いわきの各方部が医師少数区域となっている。県北は指標上、医師多数区域となっているが、福島医大の医師が各方部に多く派遣されていることなどから、県は「県北も医師数に余裕があるわけでない」としている。

 相双は、原発事故後に再開するなどした医療機関数を基に指標を算出すると、医師少数区域に該当しないが、県は「今後の住民帰還を考慮すると、確保を進める必要がある」との認識を示す。県は奨学資金制度の活用のほか、新年度から医師少数区域で必要とされる「総合診療医」の確保に向けて取り組みを始める方針。

 一方、看護職員について、県はおおむね計画通り確保できているとみている。ただ、相双の医療機関の再開状況などを注視しながら必要な人数を調査していくことが重要とする。

 看護師確保を巡って県は新年度、新型コロナウイルス感染拡大を踏まえ、感染症に関する専門的な知識を持つ看護師を県内で養成できる体制づくりに着手する。また、有事の際に看護師数を確保できるよう、再就業を希望する看護職の登録制度も新設する方針。