町の将来像...自分の力で 富岡小・中の「ふるさと創造学」授業

 
震災と原発事故の発生から町外避難までの経過について日野教諭(左)から説明を受ける生徒たち=富岡小、中学校

 「震災を過去のものにしないためにも、まずはみんなに町の現状をしっかり理解してもらいたい」。富岡町に今春開校した富岡小、中学校を訪れると、子どもたちが自分の力で町の将来像や活性化の方法について考える「ふるさと創造学」の授業が行われていた。

 同校は全児童生徒56人のうち半数以上が町外出身者だ。中には、避難などで転校を繰り返してきた子どももいるという。さまざまな背景がある子どもたちが自信を持ち、目標や夢の実現に向かって努力できる人になってもらえるようフィールドワークなどを通じて町の課題を見つけ、解決策を探る授業に力を入れる。

 この日は中学生を対象に本年度最初の創造学の授業が行われ、震災当時も教員だった日野彰教諭が、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から全町避難を迫られるまでの経過を説明していた。

 日野教諭は多くの人たちの協力で地域再生が進むと説く一方で「復興が進んでいる部分ばかりが注目されてしまい、震災や原発事故の風化が目立つ。みんなには地域を正しく理解してほしい」と訴えていた。

 富岡町の小中学校4校を巡っては、原発事故による避難で一時休校を余儀なくされたが、2011(平成23)年9月に避難先の三春町に三春校を設けて授業を再開した。17年に帰還困難区域を除く町の避難指示が解除された後は、子どもたちが富岡校と三春校の2カ所に分かれて学んでいた。一層充実した教育環境を整えようと、昨年度末で三春校を閉校し、震災前の富岡一小、富岡二小、富岡一中、富岡二中の4校を小中併設型の学校に統合した。

 富岡小、中学校は大半の児童生徒がスクールバスで通学していることを受け、体力づくりや健康増進について学ぶ「EIP9プロジェクト」を進めている。スポーツ選手や大学教授らを講師に招き、9年間かけて食事の大切さを学ぶ特別授業を定期的に取り入れる。岩崎秀一教育長は「子どもの時に受けた教育がその人の人間力を決める。多様な場面で活躍できる人材に育ってほしい」と話す。