楢葉、サツマイモの一大産地に 福島しろはとファーム復興後押し

 
福島しろはとファームの畑で復興を後押しする特産品づくりを目指し、サツマイモの苗を植える楢葉中の生徒ら=楢葉町

 国の支援制度などを活用した取り組みが本格化した地域がある。その代表例は楢葉町だ。町内でサツマイモ栽培を手がける「福島しろはとファーム」は、生産から加工、販売までを一貫して地域で担う6次産業化に力を注いでいる。町と連携して町内に共同育苗施設を整備し、サツマイモの一大産地にする構想を練る。

 同社は、甘みと食感のバランスが楽しめる品種「ふくしまゴールド」を町内で生産している。現在の作付面積は約26ヘクタールで、最終的に約50ヘクタールまで広げる予定だ。年間出荷量は1500トンを目指している。

 2017(平成29)年に町内の約1.5ヘクタールで実証栽培を始め、20年には最大1260トンを保管することができる貯蔵倉庫「楢葉おいも熟成蔵」を整備した。

 震災と原発事故からの復興へと歩む町にとって、基幹産業だった農業の再生が大きな課題だ。町の復興を後押ししようと、同社は地域住民と協力しながら、新たな特産品づくりにも意欲的だ。地域とのつながりを重視し、秋には町民らを招いた収穫祭を開催している。町民との交流を深める場を増やすため、今年は苗植え会も開いた。5月には、いわき市を中心にスーパーを展開するマルトや楢葉中の生徒らと協力し、苗植えから商品開発につなげるプロジェクトも始動させた。

 現場責任者の長井翔太郎さん(29)は「復興の先の発展を目指す。震災があったからこそ、新しいことに挑戦していきたい」と話す。

 相馬に県内最大「コメ拠点」 JAふくしま未来

 主食用米の販売が落ち込む中、JAふくしま未来は加工用のコメの安定供給を売りにして、堅調なパックご飯などで加工業者の需要を確保する戦略を描く。

 各地の生産者からコメを集める拠点となるのが、相馬市日下石に整備を計画する県内最大の乾燥調製貯蔵施設「カントリーエレベーター」だ。取扱量は約3900トンで、東北でも有数の規模となる。

 同JAは来年9月にカントリーエレベーターを稼働させる予定で、南相馬市や相馬市などからモミの状態でコメを運び入れて貯蔵する。計画的にモミすり、調製作業を行うことで、鮮度の高いコメを出荷できる体制を整える。

 併設するラック式倉庫で在庫管理も徹底し、年間を通じて加工業者のニーズに合わせたコメを安定供給する仕組みづくりを目指す。品種や等級ごとに在庫を管理し、業者の要望に応じてコメを少ない数量単位でも迅速に提供できるようにする。

 高玉輝生そうま地区営農経済担当部長(57)は「米価が下落する中、安定供給によって確実な販売を実現し、価格の維持につなげたい」と狙いを語る。

 同JAは今後、生産者らによる協議会の設立も視野に入れており、業者が求める品種の作付けなどを推進したい考えだ。