産地づくりへ「売れる農産物」模索 国、生産や加工の連携支援

 

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災地で、営農再開の動きが鈍い事態を打開しようという試みが進められている。農業の担い手不足が課題となる中、市町村や地元JA、県、国などは複数の市町村の垣根を越え、売れる農産物の産地をつくろうと模索している。農業再生の突破口になるか、展望を探った。

 東京電力福島第1原発事故で避難指示が出るなどした12市町村の営農再開の加速に向け、農林水産省と復興庁は、農産物の生産や加工で関係機関が連携した産地づくりを支援する「県高付加価値産地展開支援事業」を昨年6月に創設した。

 12市町村の農産物に付加価値を付け、安定して売れる商品化を目指す「高付加価値産地構想」を具体化する狙いがある。

 例えばコメや野菜を加工し、パックご飯や冷凍野菜、カット野菜などを製造する流れが想定される。

 国は、12市町村に必要な施設整備や生産資材の導入費用などを補助する。農産物の生産から収益性の高い商品の加工、流通まで一貫した体制を整え、新規参入や担い手確保につなげたい考えだ。

 支援事業の昨年度予算は約68億円で、このうち地元側は約47億円の交付を受けた。本年度予算は約67億円を確保している。

 農業産出額、80億円増目指す

 東京電力福島第1原発事故で避難指示が出るなどした12市町村やJAなどでつくる県高付加価値産地協議会は、震災と原発事故から20年となる2030年度に、農業産出額を19年度と比べて80億円増加させる目標を掲げている。

 内訳は、コメなどの「土地利用型作物」が21億5000万円増、サツマイモやタマネギ、ブロッコリー、ネギ、加工用トマトといった野菜、トルコギキョウやキク、宿根カスミソウ、リンドウなどの花卉(かき)を含む「園芸品目」が38億1000万円増、乳用牛や肉用牛など「畜産」が20億4000万円増。

 協議会は12市町村やJAのほか、県酪農協会、福島イノベーション・コースト構想推進機構などが昨年8月に発足させた。関係者が一体となって農業の担い手が確かな収入を得られる仕組みを整え、営農再開や農業者の呼び込みを後押しする狙いがある。