デブリ取り出し、23年度後半開始に見直し 福島第1原発2号機

 

 政府と東京電力は福島第1原発の廃炉工程のうち、2号機で溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しについて、目標だった年内の着手を断念した。作業に使う装置「ロボットアーム」の改良が必要なため。開始時期を来年度後半に見直し、当初計画から約2年遅れる見通しだ。安全に作業するために対応を迫られた形だが、最難関とされるデブリ取り出しの困難さが改めて浮き彫りになった。

 政府と東電は当初、事故から10年となる2021年内に2号機で作業開始を目指したが、新型コロナウイルス感染拡大で準備は停滞。精密な動作が求められるロボットアームの確実性や安全性を高めるため、試験を続ける必要があると判断した。

 2号機がデブリ取り出しの初号機となるが、最初はごく少量で「試験的」と位置付ける。本格的な搬出時期は未定だ。デブリ取り出しの工法について、3号機で原子炉建屋を鋼鉄の構造物で囲い、建屋ごと水没させる「冠水工法」が浮上する中、東電は2号機での経験を他号機の工程に生かしたい考えで「安全を最優先に進める」としている。

 1号機の内部調査では水中ロボットがデブリとみられる堆積物を広範囲で確認した。原子炉を支える土台のコンクリートが一部なくなり、鉄筋がむき出しになっている状態が分かった。

 東電の小野明福島第1廃炉推進カンパニー最高責任者は廃炉工程を巡り、完了まで40年程度の枠組みを維持しつつ、短期的な作業について「柔軟な見直しが重要だ」との認識を示す。ただ、事故から11年半となり、施設の老朽化も懸念されている。名古屋大大学院の山本章夫教授(原子力工学)は「時間とともに建物や構造部材が弱くなっていき、リスクが増大する。時間が重要であることも念頭に対応を進める必要がある」と指摘した。