「福島ならでは」学ぶ旅 団体企画好調、初の1万人超

 

 本県で独自に展開している旅行企画「ホープツーリズム」の誘客数が本年度、初めて1万人を上回った。県は、従来の団体向け企画が好調なのを追い風に、個人向け企画の造成に本格的に着手、福島ならではの旅としてPRし、さらなる誘客につなげたい考えだ。

 震災の被災地を訪れ、被災者から地震や津波の教訓などを学ぶ旅は通常「復興ツーリズム」と称される。未曽有の震災と原発事故、風評・風化といった特異な課題を抱える本県では、復興に向けて前進する県民の姿や希望(HOPE(ホープ))を旅行客に感じてもらうため、前向きな思いを込めて「ホープツーリズム」として打ち出してきた。

 2016(平成28)年度以降の誘客数の推移は【グラフ】の通り。「世界で唯一、複合災害を経験した福島でしか得られない新しい学びのスタイル」と県のガイドブックでうたうように、誘客数の約9割は中学生と高校生で、教育旅行が大半を占めている。

 震災と原発事故の記憶と教訓を後世に伝え、多様な学びの機会を提供しようと県や沿岸の市町は関連施設の整備、展示内容の充実に取り組んできた。

 ホープツーリズムの主な視察先は【表】の通り。原発事故対応の前線拠点となり、サッカーの聖地としてよみがえったJヴィレッジ(楢葉町、広野町)や富岡町が新設した「とみおかアーカイブ・ミュージアム」なども関心を集めている。

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 県、個人向けコースも選定へ

 ホープツーリズムで一層の誘客増を目指し、県が打った新たな一手は個人旅行の受け入れだ。県は環境省などと連携して個人向けのモデルコースの選定を進めており、新型コロナウイルスの収束と本格的な観光需要の回復を見据えて企画を練り上げていく見通しだ。

 首都圏から旅行客を呼び込む取り組みの一環として県は5、6の両日、浜通りへの観光誘客を目的としたイベントを東京・六本木ヒルズで初めて開催した。会場にはホープツーリズムの専用ブースも設け、復興の姿を浜通りの食などの魅力と併せて発信した。

 イベントには2日間で想定を上回る約5500人が来場し、担当者は「本県の魅力を感じてもらい、一人でも多くの人が本県を訪れるきっかけになれば」(観光交流課)と期待を寄せた。