双葉の震災伝承館 教訓伝える中核拠点

 
団体客の入り込みが好調な東日本大震災・原子力災害伝承館。ホープツーリズムの中核拠点として旅行客の「知る、学ぶ」を促す役割を果たしている=双葉町

 ホープツーリズムの誘客が伸びている要因として、浜通りの被災地を中心に震災と原発事故の教訓を伝える施設の整備が進んだことが挙げられる。その中核拠点となるのが、県が双葉町に建設した東日本大震災・原子力災害伝承館だ。

 伝承館は開館から約2年1カ月を迎えた10月19日、来館者数が15万人を突破した。新型コロナウイルス感染拡大に伴う行動制限が緩和されてきた本年度は、県外からの来館も順調だ。

 「このような施設があるとは知らなかったが、震災のことを改めて勉強しようと思って訪れた」。15万人目の来館者となった横浜市の男性(59)は東北地方をバイクで旅する道すがら伝承館に立ち寄った。

 伝承館によると、団体客の入り込みが好調で、学校の教育旅行、企業や団体の研修旅行での来館が増加した。ただ、来館者の割合は県内が3分の2を占めるという。後藤雅文副館長(55)は「15万人という数字はありがたく思う一方、県外での認知度向上が課題だ」と気を引き締める。

 県外での認知度アップに向け、伝承館は新たに県外での出張展示事業に乗り出す。併せて、幅広い層への情報発信の手段として「炎上を恐れないでいこう」と交流サイト(SNS)の活用も本格化させた。現在進行形の原子力災害を伝えるため、最新データへの入れ替え展示も進めている。

 後藤副館長は「ホープツーリズムの『知る、学ぶ』の核となる施設として、取り組みを進めたい」と語った。