新規就農...川俣・山木屋に実り 「試行錯誤」栽培の幅広げる

 
「山木屋に活力をもたらせるような農家になりたい」とホウレンソウの収穫に汗を流す佐藤さん

 東京電力福島第1原発事故による避難指示が富岡町と浪江町、川俣町山木屋地区、飯舘村の帰還困難区域を除く地域で解除されてから6年が過ぎた。長期避難で地域から失われた活気をどうやって取り戻していくか。関係者は復興に懸ける思いを胸に、さまざまな分野でなりわいの再建を目指して汗を流し続けている。

 佐藤弘樹さん 32

 「不安や課題はまだまだあるが、山木屋の先祖代々の土地で農業を始めることができて良かった」。青々としたホウレンソウが一面に茂る川俣町山木屋地区のビニールハウスで、新規就農者の佐藤弘樹さん(32)=福島市=が収穫作業に汗を流している。

 佐藤さんは川俣町出身。昨年3月に会社員を辞めて農業に転身し、福島市から山木屋地区に通っている。祖父の土地に整備したハウスでミニトマトの栽培に乗り出し、同6月には初収穫の喜びを味わった。「無事にミニトマトが赤く色づいてくれて良かった。収穫と同時に、改めて農家として生活していく覚悟を決めることができた」と振り返る。

 ミニトマトの最盛期は過ぎたが「いろいろな野菜の知識を習得したい」と現在は15アールの畑でホウレンソウの栽培にも挑戦。「冷涼な山木屋の気候で育ったホウレンソウは甘みがある」と手応えを感じ、JAふくしま未来に出荷するほか、福島市の飲食店に納めるなどして生計を立てている。

 作付面積を2倍に広げ、新たな農産物の栽培にも乗り出す計画だ。「耕作放棄地が増えれば地域の活力や景観が損なわれ、人が来ない地域になってしまう」と危機感を示し「地域を守るためにも新規就農の動きが波及してほしい。試行錯誤を重ねながら、農業を続けていきたい」と力を込める。