【首長に聞く】大熊町長・吉田淳氏 「安心・快適」へ生活環境改善

 
吉田淳大熊町長

 大熊町は、特定復興再生拠点区域(復興拠点)のJR大野駅周辺の再開発を進めており、12月に産業交流施設や商業施設が駅前に完成するなど復興は新たなステージを迎える。吉田淳町長は「住民が安心して快適に暮らせる町づくりに取り組みたい」と語る。

 ―復興の進み具合は。
 「町内居住者は2月現在で635人。町の調査では帰還者より移住者の方が多い。ただし、人口は震災前の1割未満にとどまっており、復興はまだまだこれからだ。町の将来像は抽象的だが『安心して快適に暮らせる町』を目標としている。大野駅前では12月に産業交流施設と商業施設が完成するなど復興に向けた重要な1年になる。課題は山積するが、生活環境の改善を一つずつ進めていきたい」

 ―東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域の再生に向けた取り組みは。
 「町の半分に帰還困難区域が残っている。避難指示解除に向けた特定帰還居住区域として下野上1区で除染が始まり、さらに9行政区も区域に加わった。復興はまた一歩前進した。一方、住民の帰還意向のない地域は多く残る。町土を取り戻すため、国は町全域の避難指示解除に向けた方針を早期に示してほしい」

 ―町内に立地する中間貯蔵施設を巡っては、除染で出た土壌などの2045年3月までの県外最終処分が法定化されている。現状の受け止めを。
 「残り21年という時間は決して長くはない。(環境省が計画している)土壌の再生利用の実証事業は東京や埼玉で(住民らに)反対されたが、その取り組みは無駄ではなかったと思う。ハレーションはあるかもしれないが、国は責任を持ち、積極的に全国で話し合いの場を設けて(県外最終処分の約束を)国民に知ってもらわなければならない」