【ふくしま経済の変遷】県建設産業団体連合会・小野利広会長に聞く

 
「本県の完全復興のため会員が協力してまい進したい」と語る小野会長

 震災と原発事故から今年で10年目。本県建設業を取り巻く環境は、復興特需が収束に向かう中、転換期を迎えている。県建設産業団体連合会の小野利広会長(71)は「県内の建設投資額が減少の一途をたどった震災前を思い起こすと、再び厳しい時代になると予想される。多くの建設業者はそれを見据えた経営体制の再構築が必要だ」と指摘する。

 ―建設業は復旧・復興を最前線で支えてきた。これまでの歩みを振り返って。
 「震災直後は道路の障害物を取り除き救援ルートを確保する『道路啓開(けいかい)』から始まった。被災箇所の応急復旧、仮設住宅の設置、建築物の危険度判定、除染作業など活動は多岐にわたった。県内の業者だけでは全てに対応できず、本県の労務単価引き上げなどを通じて、全国から応援をもらい乗り切った」

 連携体制整った

 ―復興特需の効果は。
 「本県建設業はバブル崩壊後、民間工事の減少や公共工事の削減で規模の縮小を迫られた。そうした厳しい状況でも、震災以降は復旧・復興に大きな役割を担った。建設投資額が大幅に増加し、利益率向上や倒産件数減につながった。専門工事業などの疲弊と重要性が理解され、総合建設業との連携が深まったことで、元請けと下請けの関係も改善した。一方、経営の黒字転換を機に廃業、解散する企業も出てきた」

 ―震災の教訓を災害対応にどう生かしているか。
 「県建設業協会が2012(平成24)年に県警と災害時の応急対策に関する協定を締結し、行方不明者の捜索などで協力する体制が整った。災害時はライフラインの復旧も求められ、大規模災害に即応できるよう協会としてBCP(事業継続計画)を策定した」

 行政の枠超えて

 ―今後の見通しは。
 「建設業者の経営再構築には技術や制度、精神面の改革が求められる。持続可能な建設業の確立を目指し、18年には産学官の連携協議会が設立された。町村によっては技術者不在の自治体もあり、老朽化するインフラの点検・修繕は行政の枠を超えて行うことが必要だ。一方、来年度から第2期の復興・創生期間が始まる。引き続き、本県の完全復興のため会員が協力してまい進したい」