【ふくしま経済の変遷】全日本不動産協会県本部長・新妻真孝氏に聞く

全日本不動産協会県本部長の新妻真孝氏(69)は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故によって加速した人口減少や空き家対策、いまだ続く風評被害などの課題に対し「官民一体で課題解決に取り組むことが必要だ」と強調する。
単身赴任が続く
―震災後の業界の変遷をどう振り返るか。
「震災後の数年間は、原発事故に伴う避難者の移転によって、いわき市を中心に福島市や郡山市などの都市部で不動産需要が高く、賃貸でも空きがない状態が続いた。2014(平成26)年の消費税率の引き上げと、震災特需の収束のタイミングが重なり、空きが出始めた。その後は、19年の消費税増税と新型コロナウイルスによるダブルパンチで非常に景気が悪い状況が続いている」
―震災から9年余がたつ現在の課題は。
「原発事故の風評払拭(ふっしょく)にはまだ長い時間がかかると考えている。事故後に顕著となった人口流出に加え、本県に異動となった会社員らが住む法人契約の賃貸物件などでは、家族連れではなく単身赴任で入るという形が続いている。個人契約でも震災前と比べて家族向けの一戸建てや、広めの部屋に空きが出ている。震災前に人気だった二地域居住の需要も震災で止まってしまい、今もまだ動きは小さい。また、震災後、避難者移転の需要の高まりを受けて県内ではアパートの新築が増えたが、その分の空きが出ている点も問題になっている」
官民一体で解決
―課題解決に向けどう取り組むか。
「新型コロナの影響がいつまで続くのかというのが大きな課題だ。それから、少子高齢化や人口減少、防災、空き家対策など、震災と原発事故を受けて本県ではより顕著となった多くの課題を解決するため力を入れていかなければならない。いずれも大きな問題なので、一業者で取り組むのではなく、関係団体や県、市町村などと一緒になって動かないと解決は難しい。官民一体で取り組み、前に進んでいきたい」
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