【ふくしま経済の変遷】南相馬ロボット産業協議会長・五十嵐伸一氏に聞く

 
「ロボット開発を街の産業復興につなげ、若者の雇用の場の確保を図っていく」と話す五十嵐会長

 南相馬ロボット産業協議会は東日本大震災後の相馬地方でロボット関連産業を含めた新産業の創出を目指している。五十嵐伸一会長(65)は「ロボットを一つのキーワードに、ものづくりの技術を通した街の活性化を図っていきたい」と話す。

 ノウハウ生かす

 ―東日本大震災前の製造業の状況と、震災の影響は。
 「南相馬市は元々、機械金属加工産業が盛んな地域だが、震災と原発事故で打撃を受けた。原発事故の影響で、しばらくは原材料やメンテナンス業者が入ってこられなくなり、機械部品も風評被害を受けた。製品を作れない上に、出荷などにも影響が出て、業績が悪化した企業も見られた」

 ―協議会発足のきっかけは。
 「街の復興に向け、まずは製造業が力をつけなくてはならないと、2011(平成23)年12月に官民一体となったロボット関連産業の創出を目指して旧南相馬ロボット産業協議会を発足させた。これまでの製造業のノウハウを生かし、廃炉作業用のロボット開発などに貢献したいとの思いだった」

 ―現在の協議会の枠組みは。
 「より広い分野の技術を有した技術集団を目指して、旧協議会は16年に南相馬機械工業振興協議会と統合、現在の協議会の形となった。9月現在で企業会員66社、県や市、金融機関、大学などの特別会員22機関・団体を数える。ロボットの部品供給などで地元企業が得意とする製品を積極的に売り込むなど、ものづくりを通した街の活性化を図っている」

 若者の雇用確保

 ―これまでの取り組みは。
 「来年度に南相馬市の福島ロボットテストフィールドで一部競技が行われる予定の国際大会、ワールドロボットサミット福島大会出場に向け、会員企業が互いの技術を融合し、災害現場対応ロボットMISORA(ミソラ)を開発した。地域の技術力を国内外に広くアピールする好機としたい」

 ―今後の展望は。
 「ロボット開発を街の産業復興につなげ、若者の雇用の場の確保を図っていく。次世代に地元企業とものづくりの魅力を伝え、人材育成にも力を入れていきたい」