【検証・除染】中間貯蔵必要だけど 見えない「県外最終処分」

 
除染土が運び込まれる中間貯蔵施設内の土壌貯蔵施設。元の町の風景は残されていない=2020年2月

 「中間貯蔵施設が福島復興には欠かせないのは分かっている...」。先祖伝来の土地か、福島の復興か。古里を追われた大熊、双葉両町の住民が所有する土地の上にあるのは、慣れ親しんだ家でも畑でもない。除染土が日々運び込まれる中間貯蔵施設が広がっている。

 「日本中探しても適地はうち(双葉郡)しかないと思ったよ。四季の移ろいを感じられた古里にはもう戻れないだろうな」。首相の菅直人(当時)が県庁を訪れ、突然、知事の佐藤雄平(当時)に中間貯蔵施設建設を要請した2011(平成23)年8月27日。大橋庸一(79)=双葉町=は迷惑施設建設の難題が突き付けられた日、そう悟った。

 古里奪われる気持ち

 県内の多くの自治体で除染が行われた。大橋は仮置き場への土壌搬入が進む中で、揺れ動いた気持ちがあったことを明かす。「福島がきれいになれば、福島を離れた人も戻ってくるはず。福島の農産物のPRも胸を張ってできるんだよな」

 国は14年5~6月に全16回の住民説明会を開いた。だが、「『丁寧に説明します』『お願いします』という押し付けだけ。かえって不信感だけが残った」。地権者有志でつくる30年中間貯蔵施設地権者会長の門馬好春(63)=大熊町=は、ばっさり切り捨てる。

 県が同9月1日に中間貯蔵施設の建設受け入れを伝達したことで、同月末には地権者向けの説明会も始まった。しかし、その場で示された用地の買い取り額は、仮置き場の原発事故前価格から算出したものと異なり、土地使用補償についても国内ルールから外れていた。「これでは理解できない。古里を奪われる気持ちをまるで分かっていない」。門馬の不信感は強くなっていった。

 最長30年の「地上権」

 協議の過程で政府は一時、候補地を国有化して公共事業価格で買い上げる計画を示したが、住民の意見を踏まえ、最長30年間の「地上権」を容認。また、搬入開始から30年以内に県外で最終処分を完了させることを明記した「中間貯蔵・環境安全事業株式会社法」も同11月20日に成立させた。

 建設を容認した県と双葉、大熊の両町は15年2月に搬入容認も国に伝えた。そして、同3月13日、除染で出た土壌が初めて大熊町の中間貯蔵施設に運び込まれた。

 「懸念は『永遠の中間貯蔵施設』になってしまうのではないかということ」と大橋は言う。門馬は同会として、同法3条にある「福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする」を「30年後に完了するものとすること」への改定を求めている。(敬称略)

 地上権 民法265条で定められた、他人の土地を使用する権利。中間貯蔵施設の建設では、2020(令和2)年12月末時点で、契約済みの1205ヘクタールのうち、155件約206ヘクタールについて地上権が設定されている。設定による補償として、土地価格を元に産出した地上権設定対価が地権者に支払われている。他の契約済み用地は、売買契約が交わされている。