【首長に聞く】伊沢史朗双葉町長 居住エリアしっかり整備したい

 
「戻って良かったと思ってもらえる居住エリアをしっかり整備していきたい」と話す伊沢町長

 東京電力福島第1原発事故による一部避難指示が昨年3月4日に先行解除された双葉町。来年春ごろを目標とするさらなる避難指示の解除と住民帰還に向け、伊沢史朗町長は「戻って良かったと思ってもらえる居住エリアをしっかり整備していきたい」と意気込む。

 ―震災と原発事故から10年。復興の進捗(しんちょく)の評価は。
 「2017(平成29)年に福島復興再生特別措置法が改正され、町に整備する復興拠点の計画が認定されてから、復興が劇的に進んだ。それまでは停滞していた。復興をさらに加速できるよう取り組みたい」

 ―被災自治体で唯一、全町避難が続いている。原発事故の教訓は。
 「私たちも含めて安全神話にしっかり浸っていた。人間がつくったものに絶対はなく、備えを忘れてはならないというのが教訓。平成の原子力災害を忘れないためには、この現状を全国にどれだけ発信できるかだと思う。その点では東日本大震災・原子力災害伝承館などを多くの人に見てもらうことが大切ではないか」

 ―廃炉作業中の原発や中間貯蔵施設を抱えてどう町を復興させるのか。
 「原発や中間貯蔵施設をほとんどの人がネガティブに捉えている。だが、見方を変えればプラスのものもあるのではないか。中間貯蔵施設の事業で得られた知見を産業として社会に還元したり、廃炉技術の先進地になり得たりする可能性もある。現実にある課題をどうプラスに置き換えるかという発想の転換が必要だ」

 ―復興とは。
 「個人としての考えだが、町に戻って良かったと思えるようなその時々の充実感、生活しての感覚だと思う。住民の皆さんがそう感じることができれば、復興の成果が出ていると言えるのではないか。捉え方はそれぞれあっていいと思う」