【首長に聞く】吉田淳大熊町長 「脱炭素」の推進、復興の軸に

 
「脱炭素の推進を復興の軸にしたい」と話す吉田町長

 東京電力福島第1原発事故による避難指示が2019年4月に一部地域で解除され、着実に復興の歩みを進める大熊町。吉田淳町長は「ゼロカーボン(脱炭素)の推進を復興の軸にしたい」と話す。

 ―町の復興状況は。
 「大川原地区は順調だ。今春に商業施設が開所し、秋には交流施設と宿泊温浴施設が完成する。教育施設も23年春の開設を目指す。一方、市街地だった下野上地区は来春、一部で避難指示が解除されるが、町並みは急激に変わらないだろう。地権者と交渉を進め、働く場と住む場、双方の整備に力を尽くしたい」

 ―まちづくりの展望は。
 「町は昨年、50年までに二酸化炭素排出の実質ゼロを目指す『ゼロカーボン』を宣言した。脱炭素を政策の軸として育て、復興を進めていきたい」

 ―その狙いは。
 「復興をぶれずに進める上で、筋のようなものが必要だ。全町避難という無念があるからこそ、問題を先送りせず未来のために脱炭素に取り組み、子孫が誇れる町をつくる。浜通りは年間通して晴れの日が多く、まさに天の恵み。太陽光など再生可能エネルギーを利用しない手はないだろう」

 ―町には帰還町民と東電の廃炉作業に携わる人々が住む。どう融合させる。
 「事故を起こした会社の人と思うこともあるかもしれない。でも、個人と個人はそうではない。機会を捉えて行事に参加してもらい交流を図りたい。尊重し合って暮らしてほしい」

 ―中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)への除去土壌搬入が新年度にほぼ完了する。
 「今後は県外最終処分が焦点。減容化や再利用の取り組みについて、国は積極的に情報発信してほしい。福島市にある環境省の事務所をこちらに移すなど、もっと気概を見せてほしい」