
おくのほそ道まわり道
古今東西、旅に対する人々の憧れは尽きない。先人は旅路の感慨を詩や散文に記し、その作品がさらに人々を旅へと誘う。そんな紀行文学の中でも、根強い人気を誇るのが江戸時代初期の俳人松尾芭蕉(1644~94年)の「おくのほそ道」だ。2019年は、芭蕉が本県を含む東北、北陸を巡った「おくのほそ道」の旅から330年。膨大な旅の情報があふれる現代にも、人々を引き付ける芭蕉の旅の魅力とは何だろう。福島民友新聞は、そんな問いへの答えを探しに、芭蕉の足跡をたどる旅に出る。
- 【旅の終わりに】俳人・長谷川櫂さん(中) 宇宙の中に「不易流行」
- 【旅の終わりに】俳人・長谷川櫂さん(上) 『時の激流』どう生きるか
- 【 大垣 】<蛤のふたみにわかれ行秋ぞ> そして、また...旅が始まる
- 【 種の浜 】<浪の間や小貝にまじる萩の塵> 祭りの後...にじむ充実感
- 【金沢~山中温泉】<塚も動け我泣声は秋の風/今日よりや書付消さん笠の露>
- 【出雲崎~市振】<荒海や佐渡によこたふ天河><一家に遊女もねたり萩と月>
- 【 象潟 】<象潟や雨に西施がねぶの花> 憂いを帯びた『美女の趣』
- 【鶴岡~酒田】<暑き日を海にいれたり最上川> 鮮烈に残した夏の記憶
- 【 出羽三山 】<涼しさやほの三か月の羽黒山> 天空の世界へ一歩一歩
- 【大石田~最上川】<五月雨をあつめて早し最上川> 破調に見つけた実り
- 【 山寺 】<閑さや岩にしみ入蝉の声> 石段1000段の先は『異世界』
- 【尾花沢】<涼しさを我宿にしてねまる也><這出よかひやが下のひきの声>
- 【尿前の関~山刀伐峠】<蚤虱馬の尿する枕もと> 人間の営みそのままに
- 【 平泉 】<夏草や兵どもが夢の跡><五月雨の降のこしてや光堂>
- 【 松島 】<島々や千々に砕けて夏の海> 絶景から生まれた『誤解』
- 【白石~仙台】<あやめ草足に結ん草鞋の緒> 紺の染緒に託した『真心』
- 【飯坂~国見】<旅人と我が名呼ばれん初時雨> 旅立ちの覚悟...深く強く
- 【福島・飯坂】<笈も太刀も五月にかざれ紙幟> 家族の愛...はじけた感情
- 【福島・文知摺観音】<苗とる手もとや昔しのぶ摺>落胆から生まれた名句
- 【福島城下】<早乙女に仕形望まんしのぶ摺>県都・福島に残した謎と足跡
- 【本宮・二本松】<よく見れば薺花咲く垣根かな> 剛脚の俳聖が本領発揮
- 【郡山・日和田】<茨やうをまた習ひけりかつみ草>歴史に埋もれた幻の花
- 【郡山・中町】<旅寝して我が句を知れや秋の風>街を歩けば見えてくる
- 【郡山・田村町・中町】<安積山かたびらほして通りけり>芭蕉の句あった
- 【須賀川・俳壇の系譜】<終にゆく道はいづくぞはなの雲>多代女辞世の句碑
- 【須賀川・玉川・乙字ケ滝】<五月雨は滝降うづむみかさ哉>二つの滝結ぶ
- 【須賀川・芹沢の滝】<隠家やめにたゝぬ花を軒の栗/稀に蛍のとまる露草>
- 【須賀川・可伸庵跡】<世の人の見付ぬ花や軒の栗>世俗避けた生き方共鳴
- 【須賀川市街地】<一葉にして月に益なき川柳>俳諧の心...受け継ぐ街角
- 【平・勿来】<夜は分る孤雁なるらん捨小舟> なぜ...芭蕉は来なかった
- 【白河~須賀川】<風流の初やおくの田植うた> 大事な友に伝えた感動
- 【 白河城下 】<関守の宿を水鶏にとはふもの>曽良は隠密?謎めく日記
- 【 旗宿~白河城下 】<早苗にも我色黒き日数哉> 生身の芭蕉そこに
- 【 白河・旗宿 】<西か東か先早苗にも風の音>空白に残した一対の句
- 【白河・境の明神】<卯の花をかざしに関の晴着かな>ちりばめる和歌の記憶
- 【 黒羽~芦野 】<田一枚植て立去る柳かな> 憧れの地で先人しのぶ
- 【 黒羽 】<夏山に足駄を拝む首途哉> 去りがたい人の温かさ包まれ
- 【日光~那須野ケ原】<かさねとは八重撫子の名成べし> 曽良...即興の一句
- 【 日光 】<あらたうと青葉若葉の日の光> 聖地...ただ感じるままに

はせがわ・かい 1954年、熊本県生まれ。東大法学部卒。読売新聞記者を経て、創作活動に専念する。「朝日俳壇」選者、サイト「一億人の俳句入門」で「ネット投句」「うたたね歌仙」主宰、「季語と歳時記の会(きごさい)」代表。66歳。
【旅の終わりに】俳人・長谷川櫂さん(下) かるみの先に心の安寧
松尾芭蕉来福330年の節目に始まった連載「おくのほそ道まわり道」は、今回で幕を閉じる。最後に、芭蕉・・・[続きを読む]