【TRY・グラウンドキーパー(上)】芝刈り機運転「大興奮」

 
芝刈り機に乗り作業する記者。普段運転する軽自動車とは違い、ハンドル操作が難しく真っすぐ進めない

 日本サッカーの聖地「Jヴィレッジ」を支える人たちがいる。サッカー場を管理するグラウンドキーパーたちだ。1日2ミリほど伸びる芝生を1年間休みなく、整備し続けている。一時は原発事故収束の前線基地となり途絶えたが、2019年に完全復活した聖地で、芝のプロフェッショナルにトライした。(報道部・安達加琳)

 緑一面きれいに整備された天然芝ピッチに足を踏み入れると、芝の香りもして何とも気持ちが良い。事務所を訪ねると、日焼けした顔が印象的な斉藤健さん(46)らグラウンドキーパーの皆さんが出迎えてくれた。

 整備するのは斉藤さんら6人。斉藤さんは、J1のFC東京やJ2の大宮アルディージャのサッカー場を管理した経験があり、Jヴィレッジから委託を受けて管理している。現在は本県に住み整備に励む。年に数回は都内にも足を運び、国立競技場の芝生整備にも携わるプロだ。

 「まずは芝刈りからいきましょう」と斉藤さん。記者の前に想像を超える大きさの芝刈り機が現れた。記者が普段運転する軽自動車の2倍ほどの大きさ。このマシンで2日に1回の頻度でサッカーに適した長さ15~20ミリに刈りそろえていく。

 眺めが良い運転席に乗ると、カメとウサギのマークが付いたスイッチを発見。指導してくれる黒柳力さん(53)に聞くと、ウサギのスイッチは時速8キロほどに設定できる。芝刈り機の速度で芝への負担が変わるため、生育状況を見極めて速度を変えるという。

 ブレーキはない。アクセルの強弱とハンドル操作で、長さ110メートルのピッチを刈り込んでいった。「初めてにしては上出来じゃない」。黒柳さんから合格点をもらって気分は最高潮となったが、刈り終えたピッチをよく見ると、蛇行していてきれいな直線にはほど遠い。

 一人前になるには3~5年かかるという。天候や使用予定によっては、夜中に整備することもあったというプロの道は甘くないと思い知らされた。

 芝刈りを終えて移動中、斉藤さんが話してくれた。「芝は人間と一緒。ご飯をあげるように栄養を与え、ストレスをかけ過ぎないように育てるんだ」。斉藤さんが天然芝の育成にこだわる理由はなんだろう。次の作業を準備する中、興味がさらに湧いてきた。

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 Jヴィレッジのサッカー施設 国内最大級の天然芝8面のピッチがあり、人工芝や屋内施設も合わせるとピッチは11.5面。天然芝のピッチには、「ティフトン」と呼ばれる夏芝と、「ライグラス」と呼ばれる冬芝の2種類を使用している。現在は夏芝から冬芝に生え替わる時期で、芝刈り機での作業は1面当たり2時間ほどかかる。