【TRY・シンクロ(上)】目指せ!!水中の熱い男

 
コーチの斎藤さん(右)から振り付けを教わる記者(中央)。手前はキャプテンの遠藤太樹さん。リズム感のなさを痛感した

 生まれて初めてシンクロナイズドスイミングに挑戦することになった。「本当にやるんですか」。デスクからの指令で思わず驚きの言葉が口をついて出た。「良い反応だ。このやりとり、書き出しで使えるぞ」とデスクが笑う。こうして記者の悪戦苦闘が始まった。(いわき支社・渡部俊也)

 ハワイアンズ新チームに「加入」

 挑む場所はいわき市のスパリゾートハワイアンズ。昨年12月にデビュー公演の取材でお世話になった男子シンクロチーム「スプラッシュボーイズ」にお願いし、加入させてもらった。

 チームメンバーは7人。普段は従業員としてウエーターや清掃作業などをこなす熱い男たちだ。新型コロナウイルス禍で外部からゲスト出演者を招きづらくなったことから、自らのショーで楽しんでもらおうと始まった社員発案の取り組みだ。

 メンバーは元々、シンクロ未経験者だが、週1回こなす約8時間の過酷な練習を乗り越え、昨年12月から定期公演に臨んでいる。

 デビュー公演で見たあのダイナミックな動きにどこまで近づけるだろうか。不安がよぎるが、さっそく練習開始だ。鏡張りのレッスンルームで、まずは念入りに準備運動だ。

 屈伸、アキレス腱(けん)伸ばし―。恥ずかしいことだが、高校の体育の授業以来だ。普段使っていない筋肉が伸びていく。「あしたはたぶん筋肉痛だな」。運動不足の自分を恨めしく思いながら、振り付けの練習に突入した。

 元フラガールでシンクロ経験者の斎藤佑子さん(41)の指導を受けながら、腕を回して拳を上げたり、前に並ぶメンバーと交互に腕を上げたり下げたり。簡単そうで難しく、抵抗のある水中での動きを想像できない。「マツケンサンバ2」などの曲に合わせて踊るのだが、テンポが速くてついていけない。

 そして、シンクロと縁がなかった記者はどこか気恥ずかしくも感じる。来場者を楽しませようと日々、笑顔で練習に取り組むメンバーの姿がまぶしく見えた。

 いよいよプールへ。プールに入るのも高校以来だ。着替えて入水した。「立ち泳ぎをしてみましょう」。斎藤さんの指示を受け、演技の基礎となる「一丁目一番地」の立ち泳ぎに挑む。

 水面から頭を出したまま、水中で絶え間なく手足を動かし、その場で止まった状態を保つためもがく。文字通り必死だ。「本当にできるのか」。ぼうぜんとプールの天井を見上げたまま、見えない大きな壁を感じていた。

         ◇

 スプラッシュボーイズ スパリゾートハワイアンズ内のウォーターパークで毎週土曜日、大技「やぐら」など力強い演技を披露している。シンクロナイズドスイミングは、2018年にアーティスティックスイミングに競技名が変わったが、親しみやすさからシンクロの名称で活動している。