【TRY・シンクロ(下)】やぐら頂上、足は...ぷるぷる

 
やぐらの頂上に立ち、うれしさのあまり万歳する記者。バランスを保つのがやっとで、足がぷるぷる震えていた

 シンクロナイズドスイミングの基礎となる立ち泳ぎの練習は続く。プールの底に沈むまいと、もがいていた。(いわき支社・渡部俊也)

 「できてますよ!」。スパリゾートハワイアンズ(いわき市)の男子シンクロチーム「スプラッシュボーイズ」でコーチを務める斎藤佑子さん(41)が声を掛けてくれた。

 本当にできているのだろうか。全く実感がない。辛うじて水面から頭を出すことができている状態で、あっぷあっぷだ。

 手応えをつかめないまま次は「スカーリング」の練習へ。スカーリングは水をかいて揚力と推進力を得る手の動きだ。水面にあおむけに浮き、足技を繰り出すときや水中の移動で必要になる技術だ。

 スカーリングに挑むが、腰がどんどん沈み、体がくの字に折れ曲がる。水中では体の自由が利かないことを改めて思い知った。その後もリズム感を養う練習などを行ったが、何一つものにできない。

 「このままでは終われない」。1週間後、再び練習に参加させてもらうと、話が弾んで無謀にも最高難度の技に挑戦することに。キャプテンの遠藤太樹さん(28)も「一番難しい」と話す技「やぐら」の"頂上"に挑戦することになった。

 やぐらは1段目に4人、2段目に2人が立ち、頂上に1人が立つ3段構造。水面からの高さは4メートル弱にもなる。今回は安全面を考慮して2段目のメンバーがかがみ、高さを抑えたやぐらの頂上に記者が立つ。

 公演で頂上を担当する小嶋聖斗さん(25)からこつを教わる。「首の付け根のできるだけ平らな所に立ってください」。アドバイスを受けて実践だ。

 足裏で平らな部分を探すが、バランスを崩して水中へ落ちる。姿勢を保つには体幹や足腰の強さが求められ、簡単ではない。

 支える人たちの膝や首の付け根に、足を乗せて登っていくのだが、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。そして、美しさも大事なため、登っている途中はがに股も厳禁だ。

 「できるだけスマートに登ろう」。自分に言い聞かせながらのトライだ。「遠慮せず登ってください」と小嶋さん。なんと心強い言葉だろう。もう少しだ。

 支えてもらい、やぐらの頂上によじ登ると、あとは立つだけだ。足をぷるぷる震わせながら恐る恐る立った。「できた!」。3秒程度だったが、成功だ。

 公演で小嶋さんは曲が変わるまでの7秒間、両手を広げてポーズし、体勢を保つという。それならと、やぐらにもう一度登り、頂上で立ってから1、2、3―とカウントを始めた。「長い。7秒ってこんなに長いのか」。7秒たち、うれしさのあまりチームの合言葉「スプラッシュ!」と叫んでしまった。

 やぐらはメンバー7人のチームワークで成り立っていると感じた。イメージした優雅な演技とは違ったが、メンバーと気持ちを"シンクロ"させ、演技する醍醐味(だいごみ)を体感した。