【羊飼育(上)】子羊にミルク、1分でカラ 草運びヘトヘト

 
子羊にミルクをやる記者

 春は羊の出産時期だ。2月中旬に本紙に掲載した愛らしい子羊の写真を見て癒やされていた記者。実際に飼育にトライする機会がやってきた。「あの子たちに合えるなんて」と胸を弾ませながら田村市に向かった。(郡山総支社・阿部二千翔(にちか))

 「メェー、メェー」。「アニマルフォレストうつしの森」の綿羊舎に到着すると、親羊と子羊が元気な鳴き声で迎えてくれた。「子どもが鳴くと、その親が返事をするんです」。そう教えてくれたのは、代表の吉田睦美さん(34)だ。

 ただ、気が緩んだのは一瞬だった。「羊はペットではないので、慣れている私でもけがをすることがあります」。畜産のプロである吉田さんからの言葉で気を引き締め、さっそく綿羊舎に入った。

 慣れるためにも、まずは生まれたばかりの子羊へのミルクやりに挑戦した。綿羊舎では、食肉用のサフォーク種や搾乳用のフライスランド種など、7品種の親羊計43匹を飼育中だ。

 通常ならば親羊が子羊にミルクを与えるが、中には育児放棄をする羊もいる。吉田さんが約2カ月にわたり1日に3回ほど、子羊にミルクをやっている。今回はその助手となる。

 今シーズンは、今月中旬までに35匹の子羊が誕生しており、多忙な時期が続いている。使うのは人間用の哺乳瓶だ。38度ほどに温めた牛用のミルクを持ち、生後1カ月ほどのミホちゃんとチエミちゃんの元に向かうと「早くくれよ」と言わんばかりに突進してきた。体重は10キロに満たないほどというが、気を抜けば押し倒されるほどの力だ。哺乳瓶を口元に添えると、ぐびぐびと勢いよく飲み、1分もかからずに空になった。

 続いて、出産を控えている親羊15匹の出産の準備だ。湿った草の上で出産してしまうと、生まれたばかりの子羊の体が冷えてしまうため、乾いた草を敷き詰める。

 大量の草を一輪車で運び、羊がいる綿羊舎に入る。子羊とは異なり、迫力が違う。数十分ほど作業しただけで、へとへとになってしまった記者を見て、苦笑いを浮かべる吉田さん。羊の飼育には体力が必要だと身をもって知った。

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 アニマルフォレストうつしの森

 2016(平成28)年にオープンした田村市の牧場。羊のほかに、会津地鶏も飼育している。畜産業の傍ら県内各地でふれあい動物園を開催し、子羊やヤギ、ポニー、ウサギなどと触れ合う機会も提供している。牧場にはキャンプ場も併設している。