【科捜研(下)】根気強く...間違いは厳禁!

 
法医科の業務を体験する記者。スリッパに付いた染みを採取して血液かどうかを調べる

 事件や事故現場で採取された資料の鑑定などを行う県警科学捜査研究所(福島市)の業務は、多岐にわたる。次は白衣を身にまとい、法医科の体験だ。(報道部・熊田紗妃)

 試薬で青緑、血液だ!

 法医科は現場に残された血液などを鑑定して誰のものか特定し、事件との関連などを調べるのが主な役割。法医第2科研究員の東海林優香さんの手ほどきを受けながら、実験を開始した。まずは綿棒を使い、スリッパに付いた染みを採取。試薬に触れると、白い綿棒が青緑色に変化した。「これは血です」。実際の事件なら、このスリッパが事件と関係しているとみられることが判明した形だ。

 壁や床などに試薬を噴霧し、血痕の有無を調べる「ルミノール反応」も体験する。ぱっと見は真っ黒な画用紙に暗所で試薬を吹きかけて確認すると、青白い光が見えてきた。これは血痕がある証拠。事件と関連がありそうだ。こうした鑑定を重ね、事件の裏付けをしていくという。「(研究員は)被害者と会話することはほとんどない。だからこそ、被害者の思いを想像しながら一つ一つの証拠に公正中立に向き合っている。間違いは許されないんです」。東海林さんの先輩で、記者の挑戦をサポートしてくれた研究員の板野華蓮さんが心構えを教えてくれた。

 最後は車や衣服などの鑑定を行う化学科だ。今回はデジタルマイクロスコープを使って衣服の繊維を分析し、事件との関連を調べる。主任研究員の渡辺義孝さんが倍率やスライドガラスを置く位置などを変えると、モニターに繊維が映った。

 衣類などの繊維片を鑑定し、事件現場から類似の繊維が見つかれば犯行の裏付けとなる。事故捜査では現場から採取された車の塗膜などを鑑定し、色や車種を特定することもあるという。時間や手間をかけて証拠に向き合う地道な鑑定が最終的には犯罪立証に役立つと思うと「とてもやりがいがある」と思った。

 ドラマなどの影響もあり、現場の刑事に目が行きがちだが、その裏には科捜研の研究員たちが根気強く鑑定を行い、事件解決を目指している。その思いは刑事と変わらない。県内では昨年、20年ぶりに刑法犯認知件数が増加した。これからは事件解決に向け刑事や研究員たちが奔走していることに思いを巡らせながら、取材をしていきたい。

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 刑法犯認知件数 県警によると、近年は減少傾向にあったが、2022年は6913件(前年同期比286件増)で、20年ぶりに増加した。窃盗犯が4955件(同381件増)で全体の約7割を占めている。暴行や傷害などの粗暴犯や、殺人などの凶悪犯は減少した。

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 記者への挑戦募集中

 企画「TRY」では、本紙記者にチャレンジしてほしいこと、体験を通して魅力や苦労を知ってほしいことを県民や企業・団体などから広く募り、記者がその"挑戦"を受けて体験、掲載していきます。

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