【応急手当普及員(下)】救命「一歩踏み出す勇気」

 
羽金さん(左)からAEDの使い方を学ぶ記者。機器にはパッドを貼る位置などが描かれていて分かりやすい

 応急手当普及員になることを目指し、郡山地方消防本部で胸骨圧迫などを学んだ記者。次は自動体外式除細動器(AED)の使い方に挑戦する。(編成部・続石悠海)

 郡山消防署救急係の羽金真奈美さんが持ってきてくれたのは、オレンジ色で楕円(だえん)形のAED。記者が以前から知っている機器とは色や形が違い、正しく使えるか少し不安に思った。

 AEDの操作、難しくない

 羽金さんの指導の下、まずは本体のふたを開け、電源を入れる。「あとは音声ガイダンスの指示に従って操作するだけ」と羽金さん。パッドの貼り付け方も機器に描かれていて、難しくはない。電気ショックが必要かどうかは、機器が自動で判断してくれる。形が違っても、することは一緒だ。

 パッドは訓練用の人形の服をはだけて装着したが、倒れているのが女性だった場合、どうすればいいのだろうか。「必ずしも服を全て脱がす必要はありません。服の一部をずらすか、全て脱がしても、パッドを装着した後に上から布で覆うか。下着の針金部分がパッドに当たらないようにすれば、問題ありません」という。これなら抵抗なく装着できそうだ。

 「AEDは人を元気にする魔法の機器ではありません」と羽金さん。羽金さんによると、AEDを使えば傷病人が元気になると勘違いしている人もいるそうだが、胸骨圧迫も欠かせない。「AEDは心臓のけいれんを止め、正常に動き出すための準備をする機器です」。正確な知識が必要だ。

 基本を学んだ後、実際に人が倒れている場面を想定して、一通りの1次救命処置を行った。一つ一つは難しくないが、いざとなるとやるべきことが多く、頭の中は混乱していた。「全て完璧にできなくてもいい。できることを確実に。一歩目を踏み出す勇気さえあれば、命を救うことはできます」。羽金さんの優しいアドバイスで気持ちが楽になった。

 講習を終えて修了証を手にすると、達成感でいっぱいになった。傷病者の命を救い、社会復帰率を高めるには、周囲にいる人の力が欠かせない。その重要性を感じ、多くの人に伝えていきたいと感じた。今回は取材の都合で時間を短縮して行ったため、応急手当普及員になることはできなかったが、いつか応急手当普及員になり、地域で講習会を開きたい。そして、救える命を救っていきたいと強く思った。

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 自動体外式除細動器(AED) 体に取り付けたパッドが自動的に心臓の状態を判断し、必要があれば電気ショックを与えて心臓の状態を正常に戻す機器。2004年から誰でも使えるようになった。公共施設や鉄道の駅、事業所などに設置されている。

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