十万劫山は福島市東部のなだらかな山容の里山だ。奈良時代、僧の行基が訪れ、「永劫に鎮まり、慈悲を垂れ給(たま)え」と祈念したことが山名の由来である。写真家の故秋山庄太郎さんが「福島に桃源郷あり」と絶賛した花見山公園と組み合わせたコースはハイキングにぴったりだ。
花見山ふもとから、ウメや花モモ、レンギョウ、サクラなど色とりどりの花に包まれた小道を、来場者の歓声を聞きながら登る。
15分ほどで、あずまやがある標高約180メートルの花見山山頂に着くと、福島市内や吾妻連峰などが一望できる。さらにクヌギとアカマツの雑木林の山道を、上下しながら進む。枯れ葉を踏む音と小鳥のさえずりしか、聞こえない。
途中、十万劫から花見山に下山する仙台のグループと出会った。男性は2人で、10人は女性。花見山だけでは物足りないので十万劫登山も組み入れた、という。女性はとにかく元気だ。
弁天山から登ってくる「しのぶの細道」と合流。車1台が通れるこの道を登って、山頂に到着した。雷神を祭った社があり、由来や行基を詠(うた)った漢詩を記した案内板がひっそり立つ。道中、阿武隈の山並みを望める。
山頂から、雑木林の中の登山道を下ると、車道と合流し、50分ほどで、福島市指定の天然記念物・茶屋の桜の前に出る。ここで道は、茶屋沼に向かう道と花見山に行く「塩の道」に分かれ、塩の道を30分も歩けば再び花見山だ。
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