3万株といわれるヤマツツジが、今月下旬から来月上旬にかけて山頂を真っ赤に染める。明治末から昭和10年代、この地方が馬の産地として栄えていたころ、山頂に放牧された馬が剪定(せんてい)するように新芽を食べたため、丸みを持った美しいツツジの大群落がつくられたという。
5月16日、田村市大越町の牧野口から登った。清廉と並ぶ杉木立の中、少し急な道を行く。500メートルも進み、体が汗ばんだころ、目に心地よいまぶしさを感じる。萌(も)え出たばかりのはじけるような淡い緑の輝きが心を癒やす。
「若返り清水」と「長寿の滝」という水場を2つ過ぎると、青空がぐっと広くなり、山のてっぺんまで波打つように続くツツジが姿を見せる。まだつぼみだったものの、開花寸前の強い赤みを帯びていた。背丈を超えるツツジの木がつくる迷路を抜け、ようやく展望台に着いた。
見下ろす山頂の風景は、まるで庭園。ツツジの波が途切れた先に、阿武隈山系の山並み、田村市や郡山市街、遠くには安達太良山が広がる。
帰りは旧登山道を歩いた。くぼんだ道は落ち葉が積もっていて軟らかい。頭の上はもえぎ色のトンネルが覆う。気分良く足を進めると、登山口は驚くほど近かった。
高柴山から南に約6キロの東堂山(659メートル)には昭和羅漢がある。全国から奉納された421体の個性的な羅漢様が、訪れる人を異空間へと誘う。
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