福島市と猪苗代町、山形県にまたがる吾妻連峰。湿原の高山植物や標高1900メートル級の山々が、彩りの季節を迎えている。東吾妻や西吾妻など数ある山の中から景色の変化に富む一切経山と鎌沼周辺を歩いた。
浄土平から一切経山へは、木道が整備された東北自然歩道線側からのルートを選んだ。途中で立ち止まって振り返ると、福島のシンボル・吾妻小富士と赤や緑に縁取られた桶沼の美しい姿が見える。
登りが終わると、コケモモなどの高山植物が真っ赤に染まった草紅葉の酸ケ平が開ける。遊歩道をしばらく歩いて避難小屋から一切経山へと向かった。
目を楽しませてきた高山植物が姿を消し、岩だらけの登山道を登ること約1時間。さえぎるものが何もない山頂にたどり着いた。
福島市の田園地帯や安達太良山、磐梯山が一望できるパノラマが広がる。すぐ下には「魔女の瞳」の別名を持つ五色沼が神秘的な色をたたえ、登山者の疲れを癒やす。紅葉の季節には週に2、3回は登るという同市の農業佐藤博さん(66)は「何度来ても飽きない」と深呼吸した。
登りと同じルートを下山し、鎌沼の遊歩道を散策。色づいた蓬莱山や秋風にさざ波立つ水面の眺めは、山を登り切った達成感とは異なる爽快(そうかい)さを感じさせる。
浄土平ビジターセンターを訪れれば、展示されているパネルで動植物の名前を確認できるほか、職員から登山や自然観察などに関するアドバイスを受けることもできる。
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