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かつて、人々の生活と密着し暮らしを支えてきた県内里山。燃料や農業に必要なものを得るために手を入れてきた。変わりつつある現在の里山の風景、森づくり、行事など、人と森のかかわりとともに、そこに息づく生物を紹介する。
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【 18 】 ミソハギ
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お盆の墓を彩る美しい野草
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鮮やかな赤紫の花を咲かせるミソハギ。花にはみつを集めるセセリチョウの姿が=南相馬市原町区大甕・星政身さんの休耕田
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休耕田にひときわ目立つ赤紫の花の群落−。花の周りをさまざまなチョウやハチがみつを求め、忙しそうに飛び回っている。ミソハギはお盆の前に咲きそろうことから、古くから仏壇や墓に供えられてきた。
県植物研究会の伊賀和子さん=南相馬市原町区=もお盆になるとミソハギを供える一人。「父親から、仏様は野山の花を喜ぶと教えられました」。今でもミソハギのほか同時期に咲く、オミナエシやカワラナデシコといった野草を供える。以前、摘んでいたという「キキョウは、今や絶滅危惧(きぐ)種です」
機械使う草刈りで残せず
「かまで草刈りをしていた時代は、お盆に供えるための草花は刈らずに残しておいたものですが、今はどこでも草刈り機ですから」。それでも、野の花を供えるために少々、遠くても花摘みに出掛けるという。
ミソハギの語源は、仏前で花穂に水を含ませて供物に水をかける風習が、みそぎを連想させるところから禊萩(みそぎはぎ)、または湿った溝などに生えることから溝萩(みぞはぎ)だともいわれる。
伊賀さんが講師を務めた自然観察会で、偶然、ミソハギの群落に出合った。観察会の参加者が所有する休耕田で、墓参りの際に摘んでもかまわないという。「今年は遠くまで行かなくてもいいわ」とうれしそう。
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(写真と文・矢内靖史)
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【 ミソハギ 】
ミソハギ科の多年草。草丈は50〜100センチ。近縁のエゾミソハギは、裏磐梯の桧原湖周辺などで見られる。
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