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かつて、人々の生活と密着し暮らしを支えてきた県内里山。燃料や農業に必要なものを得るために手を入れてきた。変わりつつある現在の里山の風景、森づくり、行事など、人と森のかかわりとともに、そこに息づく生物を紹介する。
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【 47 】 クロサンショウウオ
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冬眠覚め産卵が本格化
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小さなため池に産み付けられたクロサンショウウオの卵のう。水中で雌を待つ雄が跳ね、水面に波紋をつくる=南相馬市
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冬眠から覚めた一部の生き物たちが活動を始めた。南相馬市の丘陵地帯では、クロサンショウウオの産卵が本格化している。小さなため池の中で蚕の繭のように真っ白な卵のうが、積もった落ち葉と美しいコントラストを描いている。
南相馬市博物館の学芸員・稲葉修さん(42)は、1996(平成8)年にこの生息地を発見した。「初めは、会津地方から人為的に持ち込まれたのかと思いました」と稲葉さんは当時を振り返る。それまで見つかっていた阿武隈山地内の生息地は、茨城県の標高700メートル以上の山間部に限られていた。しかし、この生息地の標高は50メートル前後と格段に低かったのだ。
学術的に重要な個体群
稲葉さんの地元住民への聞き取り調査によると、かつて、この特徴的な形の卵のうは、付近のため池で数多く見られたという。会津の高山地帯の生息地とは環境が全く異なり、学術的にも重要な個体群だという。
「でも、人とのかかわりが深い分、生息環境が壊されやすいんです」。浜通りの生息地の多くは人家に密接し、人的な要因によって生息環境は年々悪化している。稲葉さんは、生息地の所有者を訪ねて回り、この個体群の重要さを説明し続けている。「(保護活動は)地元の人たちの協力のおかげです」。稲葉さんは、いつも感謝の心を忘れない。
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(写真と文・矢内靖史)
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【 クロサンショウウオ 】
有尾目サンショウウオ科。全長18センチ。東北地方と北関東、中部地方北部と福井県北部に分布。日本固有種。
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