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届かぬ地権者の声 中間貯蔵候補地の大熊、双葉2000人

 県内の除染で出た汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設をめぐり、県は政府に大熊、双葉町への建設受け入れを伝えた。政府が2町に設定した約16平方キロの建設候補地の地権者数は少なくとも2000人に上る。政府は今月下旬以降にも、地権者に対する説明会を開催したい考えだ。両町の地権者数は、大熊町が課税資料から把握しているだけで約1500人。このほか共同所有の土地や非課税扱いの土地もあってさらに増える見通し。双葉町については、町が今年3月の町議会で約500人になるとの見込みを示しており、環境省と両町が地権者の確定作業を進めている。しかし、震災の津波被災による防災集団移転で土地所有者の確定が事業の進行を遅らせる要因の一つとなった前例もあり、同様に難航が予想される。

 【大熊の渡部さん】故郷失う「悔しくて…」
 「大切な故郷を失うことが悔しくてたまらない。なぜ地権者の声を聞きもせずに判断するのか」。東京電力福島第1原発事故に伴う避難で大熊町小入野から会津若松市の借り上げ住宅に避難している渡部隆繁さん(64)は、中間貯蔵施設の建設に納得できない。
 自宅は原発から約3キロの中間貯蔵施設建設予定地にある。農地約4.5ヘクタールで40年以上にわたり農業を続けてきた。「努力で作り上げた農地が水の泡だ。先祖に申し訳ない」。安心な農作物を目指し有機農法やアイガモ農法、土壌改良で無農薬米や有機野菜を作り、自慢の農産物を全国に販売した。原発事故で生業(なりわい)を奪われ、土地すらも失われようとしている。「今も農作業の夢を頻繁にみる。体が農業を忘れないんだ」
 国や県、町が受け入れを表明し進み出した中間貯蔵施設。「県民のための必要性は分かる」と犠牲もやむなしとする一方で「町や県は交付金の話ばかりで、まさに『金目(かねめ)』。本来は地権者の生活を議論すべき」と指摘する。農業再開に向けた移住を考えてはいるが「将来の生活再建がみえない。今のままじゃ一歩も踏み出せない」と不安を抑えきれずにいる。

 【双葉の佐藤さん】苦渋「売るか、貸すか」
中間貯蔵施設の建設候補地とされる双葉町郡山地区から、いわき市の仮設住宅に避難する佐藤一夫さん(73)は、国から郵送されたばかりの資料を手に「先祖伝来の土地を売るか貸すか。苦渋の選択だ」とため息をつく。
 国は、最終処分場の法制化前に中間貯蔵施設への土壌搬入はしないとしている。だが「順番が逆ではないか。最終処分場が決まって初めて、中間貯蔵施設の話をすべきなのに」。国への不信感は拭えない。一方で、中間貯蔵施設そのものについて「どこかには置かないといけないもの。ないと復興にはつながらない」と分かっている。だが、古里に施設ができることで「双葉町はなくなってしまう。みんな戻らないだろう」とやるせない気持ちになる。
 今後、国は説明会や地権者との個別交渉に入っていく。「地権者には高齢者も多くいる。よく分からないまま、国に押し切られてしまうのではないか」と危惧する。「専門用語も多く出てくるだろうから、国には一人一人に丁寧な説明を求めたい。また、町にも国と地権者の間に立ってサポートしてもらわないと」

 【楢葉の藤浪さん】「負担は同じ」
 
中間貯蔵施設とは別に、セメント固化施設など関連施設の候補地となっている楢葉町。建設候補地からほど近い波倉地区に自宅を構える藤浪敬子さん(44)は8月下旬、約3カ月ぶりに一時帰宅し、庭先の伸びた雑草を刈った。「あの日から3年6カ月もたつのに何も進んでいないように感じる」
 いわき市に避難し、現在は夫や高校生の長男らと借り上げ住宅で生活する。一時は波倉が中間貯蔵施設の候補地に挙がり、避難先に生活基盤を築こうと決心した。しかし自宅は関連施設の候補地から外れた。戻りたい気持ちはあるが、近所の多くは戻らない決断をした。「戻っても、地域のつながりもない。生活できるのだろうか」
 「町は波倉をどうしたいのか、青写真が見えない」と話す。中間貯蔵施設から関連施設に変わったことで負担が減るように思われがちだが「負担は0か100か。中途半端の50はない」と気持ちは揺れる。
(2014年9月4日 福島民友ニュース)



 

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