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原発災害・「復興」の影
帰れない
 
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復興予算の使途に“疑問” 「国の体裁しか考えていない」

復興予算の使途に“疑問” 「国の体裁しか考えていない」

避難区域の事業より、帰還を諦めた避難者への支援を手厚くすべきという声がある。写真は大熊町で7月に行われた墓地の除染作業

 環境相の石原伸晃(56)は今年7月、大熊町の帰還困難区域にある共同墓地で環境省と復興庁が行う除染の現場を視察した。現職大臣が帰還困難区域に入るとなれば県内外の報道陣が同行する。発言は全国に流れる。石原は居並ぶカメラを前に「線量計を持ってきたが、除染の場所に近づくほど(放射線量は)下がった」「お盆には防護服なしで墓参りできるのでは」と、除染効果を強調してみせた。

 住民感情ないがしろ
 「国の体裁しか考えていない。お墓を除染しましたとか、表面を際立たせてみても、住民の気持ちはないがしろ」。大熊町から会津若松市の応急仮設住宅に避難する熊田雅弘(63)=仮名=は「除染、インフラ整備イコール復興」のような風潮に首をかしげる。首都圏の支援団体の1人から言われた。「お墓も除染で、きれいになったね」。言葉に悪意がないのは分かっているが、心はささくれ立つ。
 住宅地の除染が一応終了した川内村ですら、仮設住宅などを引き払って村に戻ったのは人口の2割弱、500人程度にすぎない。東京電力福島第1原発の廃炉作業が30〜40年にわたって続く大熊町に、そう簡単に帰れるとは思えない。「7割ぐらいの人間が帰るならいいけど、帰るのは2割ぐらいかな。2割のために病院から何から全部造るの? べらぼうな金だよ」。熊田は復興予算の使い道が間違っているのではと思う。
 熊田は近くで遊ぶ孫を見つめながら続ける。「廃炉までは50年かかるとみているんだけど、この孫がわれわれの年になるころだ。子どもたちが50年たって帰っていいよと言われても、大熊にこだわる理由がない」

 帰還断念者に支援を
 「生きた金の使い方をしてほしい」。同町からいわき市に避難している大楽耕一郎(61)=仮名=は「除染、除染というけど線量が一度下がって、また上がる場所もある。やる意味があるのか」と話す。除染などで避難区域の事業に多額の資金を投入するより、帰還を諦めた避難者への支援を手厚くすべきという声は、もはや少数派ではない。
 「帰るのはとうに諦めているが、どこに家を建てればいいのか」と熊田は嘆く。「100軒なら100軒分、国が土地を用意してほしい。家の建設費は避難先の建設業者らに流れるが、それで避難先が潤うなら、それはそれでいい。こっち(避難者)は先が見えないので賠償金の使い道もない。しっかりした使い方を早く―と気持ちが空回りするばかりだ」(文中敬称略)

(2013年9月17日 福島民友ニュース)



( 2013年9月17日付・福島民友新聞掲載 )
 

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