被災地の“声”…国政に 有権者「復興は実感できてない」
東日本大震災から3年9カ月となった11日、衆院選終盤の追い込みに入っている各陣営は「節目」のこの日も選挙カーでの訴えに力を込め、口々に「復興」や「再生」というキーワードを並べた。「最優先に」「全力を挙げて」と候補者が熱弁を振るう一方で、演説に聞き入る有権者からは「復興は実感できていない」「もっと被災地に目を向けてほしい」という切実な声が挙がる。本県の復興は道半ば。被災地の復興の在り方が問われる大事な衆院選の投票日はもうすぐだ。
福島5区の男性候補は午後、津波で大きな被害を受けたいわき市平薄磯地区に入った。多くの家屋が流失し、120人以上が犠牲になった同地区。男性候補は同地区役員らでつくる薄磯復興本部のプレハブ小屋を訪れ「一緒に黙とうさせてください」と声を掛けた。
震災発生時刻の午後2時46分。大雨の中、男性候補は海岸に臨む寺院の敷地内に設置された供養塔に手を合わせ、1分間黙とうした。
「津波から復旧へ 工事早く進めて」
節目の日に合わせ、復興前進のため国政に身を投じる決意を示した男性候補だが、被災地の復興はまだまだ道半ばだ。同地区の鳥居喜一郎区長(74)は「薄磯は防波堤も防災緑地もまだできていない。高台移転など課題が山積している」と表情を曇らせた。また、鳥居区長は「(どの政治家も)選挙の時だけでなく公約を守ってほしい。津波被災地の工事を早めてほしい」と注文した。
同地区で民宿を営む鈴木幸長さん(61)は「いわきは津波被災者が多い上、風評被害にも苦しんでいる。汚染水の問題もあり、今のままでは水産関係の復興もできない」と指摘。さらに「津波被災地は忘れられている感じがする。住民が戻ってくる新しい町になるよう、平等に支援してほしい」と新議員に要望した。福島2区の男性候補は午後2時46分、郡山市役所前で黙とうをささげた。市役所の展望台は震災で崩落、男性の遺体が発見されており、街頭演説では「市とも力を合わせて復興・再生に取り組んでいく」と訴えた。
「スピード緩めずに」
福島3区の男性候補も午後2時46分、遊説先の古殿町で黙とうした。3区の県南地域は震災の揺れそのものによる建造物被害が大きかった。震災と余震で10カ所の石垣が崩れた白河市の小峰城跡では来年の一般開放に向け復旧工事が進む。同城跡を拠点に活動する観光ボランティア「ツーリズムガイド白河」の渡部武会長(78)は「石垣が復旧しないと震災復興は感じられない。選挙の結果がどうでも、工事のスピードは緩めないでほしい」と切実に思いを述べた。
(2014年12月12日 福島民友衆院選ニュース)
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