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【7】規格外、捨てずに生かす 山口こうじ店専務・山口和真

2025/03/24 16:44

トマト甘酒をPRする私(前列左)。これからも食品ロス問題など、さまざまな課題に発酵食品の力を使って挑戦していきたい

 世界の人口増加に伴い食糧難が深刻化し、「昆虫食」の話題も出るほどの時代になった。そんな時代に貴重な食料を無駄にしないようにと、食品ロス問題と向き合い、食の大切さを若い世代に伝える食育にも力を入れている。

 山口こうじ店では、甘酒の発酵段階で食材を混ぜ、さまざまな味の甘酒を造ることができる。その食材に見た目や大きさは関係ない。重要なのは味だ。そのことに気付いて色づきが悪く、傷があり処分されていた野菜を原料にすることで食品ロスの解消に貢献できるのではないかと考えついた。

 白河市の隣、中島村は県内有数のトマト生産地。村産の処分される予定の規格外のトマトを使用し、2020年にトマト甘酒の生産に取り組んだ。村のトマト農家に加え、村のデザイン会社がラベルをデザインするなど、地域の垣根を越えたプロジェクトになった。

 トマトのおいしさと甘酒の良さを存分に生かす調合を探すため、試作を何度も重ね、完成したトマト甘酒は好評だった。新型コロナウイルスが猛威を振るう中で、食べる点滴と呼ばれる甘酒と栄養価たっぷりのトマトが合わさったトマト甘酒は人気商品となった。村の中島放課後児童クラブの児童たちにも試飲してもらうと「爽やかで飲みやすい」と喜んでもらえたことを覚えている。

 トマト甘酒をきっかけに、翌年、村の吉子川小で食育授業を行うことになった。農業が盛んな村での授業。6次化産業が地域の活性化につながることを伝えた。未来を担う子どもたちに食の大切さや食を使った仕事の生み出し方を伝える中でその重要性に気が付いた。「生きる上で欠かせない『食』についてもっと知ってほしい。自分が学んだ微生物や仕事にしているこうじ菌のことをもっと伝えていきたい」。そんな思いが芽生えた。

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