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クマ厳戒、福島県が福島市に専門家派遣 危険な場所点検、花火の打ち上げ方指導

2025/10/31 10:00

クマを追い払うための花火の打ち上げ方を教わる住民ら=30日午前、福島市在庭坂
伐採する木に印を付け、専門家から指導を受ける住民ら=30日午前、福島市在庭坂

 福島県内でクマの目撃や人身被害の件数が過去最多となる中、被害防止に向けた県の緊急対策が始まった。30日は目撃情報の多い福島市在庭坂に鳥獣対策の専門家を派遣した。今後も人里でのクマの出現が続くことが予想され、県は「非常事態」として市町村と連携した人身被害の防止など警戒を強める方針だ。

 福島市で行われた緊急対策では、専門家が住民と共にクマが好む柿や栗の木がある場所を点検して伐採するべき木を選んだほか、クマを追い払うための花火の打ち上げ方を指導した。

 県は緊急対策として市町村に専門家を派遣。河川敷やクマが好む柿の木がある場所など出没の危険性が高い場所を点検し、必要に応じて草木の刈り払いなどを実施する。3事業者に専門家を委託していて、1日に最大6件派遣する。箱わなや撃退スプレーなどの対策用品の提供、鳥獣保護管理員らによるパトロールなども行う。

 県によると、本年度のクマの目撃件数は15日現在で1038件となり、これまでで最も多かった2023年度(709件)の約1.5倍に上る。人身被害は29日現在で18人となり、過去最多だった23年度の15人を上回っている。県は専門家の派遣などに加え、情報発信や市町村が円滑に対策に取り組めるよう支援していく考えだ。

 樹木伐採、危険箇所を助言

 クマの目撃件数が過去最多を更新し、人身被害も相次ぐ「非常事態」として、県の緊急対策が本格的に動き出した。目撃情報が多数ある福島市在庭坂に派遣された専門家は、住民に「クマは餌を食べることができた場所を覚えている」と注意を促し、果実が実った柿やクリの木を伐採するべきかどうかを助言。追い払うための花火の打ち方など、危険から身を守るすべが示された。

 県から委託された東北野生動物保護管理センターの今野文治首席研究員が地元の上志田町内会の関係者、県や市の職員と地域を歩き、危険な場所を点検。優先的に伐採するべき木に目印を付けていった。木は所有者の了承を得た上で後日伐採される。市によると、本年度の市内での目撃情報は300件以上。今回点検した地域周辺では約40件目撃されている。

 点検の中で、1週間以内に排出されたクマのものとみられるふんも見つかった。今野首席研究員は「目撃情報がなくても痕跡が残っている。人が気付いていないだけでクマは来ている」と指摘。「クマをどうにかするには時間がかかる。常にクマが潜んでいるんじゃないかという意識を持ち、命を守る行動をしてほしい」と話した。

 点検に参加した町内会長の男性(69)はクマの影響について「孫の通学路の安全確保ができず、毎日車で学校に送迎している。1人で草刈りもできない」とし、「専門家に伐採やごみ集積所についてアドバイスをもらった。町内会で取り組んでいきたい」と話した。

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