全国の路線バス事業者が2023年度に廃止した距離の総延長は2496キロで、前年度(1598キロ)の1・5倍に増えた。政府が27日閣議決定した25年版交通政策白書に盛り込んだ。長期的な需要減退に加え、深刻化する運転手不足が背景にある。白書は「バス路線の廃止や減便が全国的に顕在化し、地域交通は危機的な状況」と指摘している。
路線バスはマイカー普及や人口減、少子化などを背景に、乗客減に歯止めがかからない。廃止距離は19年度以降、1500キロ前後で推移していた。近年は、運転手が高齢化する中、他業種と比べて給与が低いなどの事情から担い手が足りず、路線廃止、減便に踏み切る例が目立っている。
運送収入も低迷している。白書によると、バス車両30台以上を保有する217事業者のうち、23年度の経常収支が黒字だったのは26%だった。
鉄道も乗客減と施設老朽化への対応で経営が厳しく、タクシーがすぐに来ない地域もある。白書は、公共交通機関を利用しにくい「交通空白」を解消する必要があるとしている。