陽子線は身体の奥に効果

 

 標準的な「がん」治療は、手術・抗がん剤(化学療法)・放射線治療の三つで、放射線による「がん」治療は手術や抗がん剤に勝るとも劣らない選択肢の一つですと前回紹介しました。

 治療では、エックス線やガンマ線といった光や携帯の電波の仲間の放射線が使われることが多いのですが、陽子線をはじめとする「粒子放射線」(全ての物質を形作る「陽子・中性子・電子」の粒自体、またはその塊)を当てることもあります。

 陽子線は病気の種類や体内の場所によって選択されますが、使われる場合はまだ多くありません。一部の小児がんや前立腺がんをはじめ、保険適応も限定されています。

 ただ、陽子線はエックス線と大きな違いが一つあります。

 エックス線を身体の外から当てると、身体の表面近くに最も放射線が当たり、身体の奥に行けば行くほど当たる放射線の量は少なくなります。それに対して陽子線は、身体の表面近くではエネルギーを放出しません。陽子がある程度身体の中に入り、陽子の粒の動きが体内で止まる直前に大きなエネルギーを放出して、周りにダメージを与えるという特徴があります。そのため、身体の中にある病巣の手前側やその先にあまり放射線は当たらず、病巣のみに効率よく放射線を当てることができるという利点があるのです。