遺伝子異常、タイプに違い

 

 今回の原発事故による放射線被ばく量とその健康影響について、今年3月に国連の委員会(UNSCEAR)から「2020年レポート」として、最新の報告書が発表されました。今回の報告書の中で委員会は、事故後に甲状腺がんが多く見つかっていることについて、恐らく放射線被ばくとは関係がないであろう、とコメントしています。

 その理由の一つとして、今回の原発事故後に見つかった甲状腺がんの遺伝子の異常が、チェルノブイリ事故後や広島・長崎での原爆投下の後に見つかっている甲状腺がんの遺伝子の異常とタイプが異なっているという点があります。

 チェルノブイリ事故後や、広島・長崎での原爆投下後に多くの放射線を受けた方の甲状腺がんには、ある特定の遺伝子の異常が見つかっていました。その遺伝子異常は、その甲状腺がんが放射線を受けたことによって生じたものかどうか、を知るための目印となり得るかもしれないと考えられています。

 その一方、今回の原発事故後に見つかった甲状腺がんの遺伝子を調べても、このチェルノブイリ事故後に特徴的な遺伝子異常はほぼ見つかりませんでした。逆に、わが国で放射線とは関係のない成人および高齢者で、一般的に見つかる甲状腺がんが持つ遺伝子異常と同じタイプの異常を持つ場合が多いことが分かっています。