脳卒中について。その44 【第6のリスク・コレステロール】

 
 公立藤田総合病院・佐藤昌宏 福島県立医科大学医学部大学院卒業、医学博士号を取得。同大学附属病院から総合南東北病院、福島赤十字病院、原町市立病院等にて勤務し1996(平成8)年4月から公立藤田総合病院脳神経外科。2008年4月より同病院副院長。専門は脳血管障害の診断と外科治療。日本脳神経外科学会専門医・指導医、福島県立医科大学医学部臨床教授

 今回は脂質異常症や高血圧、糖尿病が原因でおこる動脈硬化についてお話しします。動脈硬化には2つのタイプがあります。

 1.血管が狭くなる「アテローム動脈硬化」

 アテローム動脈硬化(粥状硬化)とは、血管の内膜にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)がたまることで血液の通り道が狭くなるものです。血液中のLDLコレステロールは、多くなり過ぎると血管の内皮細胞の下にもぐり込んでたまります。マクロファージ(白血球の一種)がこれを食べていき、たくさんため込むと炎症物質を出しながらその場で死んでしまい、この死んだ白血球の塊が増えると、血管の内膜が押し上げられて血管が狭くなってしまいます。その肥厚した部分をプラークと呼びます(図1)。

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 普段、アテローム動脈硬化の自覚症状はありませんが、動脈硬化が強くなると、必要な血液が十分に流れない状態になり、一時的に脳に血液が十分に届かなくなり、麻痺や言語障害が出る一過性脳虚血発作や、動いた時に胸が苦しくなる狭心症や、歩いた時に脚がだるくなったり太ももが痛くなったりする末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)の症状が現れることがあります。

 閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化が進むことで動脈そのものが狭くなったり詰まってしまったりする病気で、主に下半身の動脈に起こります。下半身に向かう動脈は、骨盤内で枝分かれし、太もも・ふくらはぎを通って、足の指先まで到達します。このふくらはぎ、太もも、骨盤の中を通る太い血管そのものが狭くなったり閉塞したりすると、血流が途絶えて酸素や栄養が送られなくなり、痛みやしびれなどさまざまな症状を引き起こします。

 動脈硬化が進行した血管内膜は傷がつきやすい状態になっています。そのため、血小板血栓(血のかたまり)ができやすくなり、場合によっては血管を詰まらせてしまうことがあります。このように、動脈硬化が進行すると命に関わる心筋梗塞や脳梗塞などの病気につながります(図2)。

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2.血管が硬くなる「石灰化」

血管の中膜の部分に血液中のカルシウムが沈着して、血管が硬くなるのが石灰化と呼ばれる動脈硬化です。石灰化は、高血圧などにより血管の中膜にある平滑筋や線維、プラークにカルシウムが異常に沈着して硬くなることで起こります。血管の石灰化が進行すると、血管が伸び縮みしにくくなり、しなやかさがなくなり、血流によるダメージを受けやすくなります。石灰化は前述のアテローム動脈硬化が起きていない場所にも起こります。動脈の石灰化は動脈硬化の最終像といわれています。心臓の冠動脈の石灰化が強い場合には心筋梗塞や狭心症などの心臓病の発症リスクが高くなります。

 原因

 動脈硬化の危険性が高いのは、脂質異常症、内臓脂肪型肥満、高血圧、糖尿病、骨粗しょう症、睡眠時無呼吸症候群などの人や喫煙者と考えられています。

 検査・検診

 動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの病気をどれくらい起こしやすいのか、検査を受けることである程度予測ができます。検査は大きく2つに分かれます。ひとつは一般的な健康診断です。血液検査などから自分が持つ危険因子をチェックできます。職場や自治体で受ける一般的な健康診断では、脂質異常・高血圧・高血糖がチェックできます。複数の数値に異常が見られる場合には、動脈硬化の疑いありと指摘されます。もうひとつは医療機関で受ける検査です。動脈硬化をさまざまな装置を使って観察します。

 次回は動脈硬化、脂質異常症の予防法や治療法についてお話しします。