脳卒中について。その45 【第6のリスク・コレステロール】

 
 公立藤田総合病院・佐藤昌宏 福島県立医科大学医学部大学院卒業、医学博士号を取得。同大学附属病院から総合南東北病院、福島赤十字病院、原町市立病院等にて勤務し1996(平成8)年4月から公立藤田総合病院脳神経外科。2008年4月より同病院副院長。専門は脳血管障害の診断と外科治療。日本脳神経外科学会専門医・指導医、福島県立医科大学医学部臨床教授

 今回は脂質異常症や高血圧、糖尿病が原因でおこる動脈硬化の予防についてお話しします。大切なことは、生活習慣の改善です。

 1.食事を改善することで動脈硬化が予防できる

 動脈硬化予防には、食生活の見直しが不可欠です。食べ過ぎによる肥満は動脈硬化を進行させてしまうので、注意が必要です。

 また、食事の中の脂分を控えることで動脈硬化を防ぐことができます。動脈硬化に関係するLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が上がらないようにすることが重要です。そこで、日本動脈硬化学会では、動脈硬化予防に役立つ食事として日本食パターンの食事「ザ・ジャパン・ダイエット」を勧めています。

 ①肉の脂身、動物脂、鶏卵、清涼飲料、お菓子の砂糖や果糖を含む加工食品、アルコールを控える

 動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸は、LDLコレステロールを増やします。また、砂糖や果糖を多く含む食品やアルコール飲料は、中性脂肪が増える原因となります。いずれもエネルギーが高く肥満にもつながりやすい食品なので、取る量を控えましょう。

 ②魚、大豆・大豆製品、緑黄色野菜を含めた野菜、海藻、キノコ、こんにゃくを積極的に取る

 魚、特にサバ・イワシ・サンマなどの青背の魚に多いEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などn-3系多価不飽和脂肪酸は、中性脂肪を上がりにくくする積極的に取りたい「よい油」です。大豆製品に多いn-6系多価不飽和脂肪酸は、LDLコレステロールを減らします。大豆製品や野菜、海藻、キノコ類、こんにゃくは水溶性食物繊維が豊富です。これらは、コレステロールの小腸での吸収を抑えたり、便として排泄されるのを促したりという、よい働きがあります。また、緑黄色野菜には、ビタミン・ミネラルも豊富に含まれています。

 ③精製した穀類を減らして、非精製穀類や雑穀・麦を増やす

 雑穀や麦にも、水溶性食物繊維が多く含まれます。

 ④甘味の少ない果物と乳製品を適度に取る

 果物には水溶性食物繊維やビタミンCが豊富で、乳製品は骨をつくるカルシウムやビタミンDが豊富なため、いずれもぜひ取りたい食品です。ただし、食べ過ぎには注意が必要です。甘い果物は糖質を多く含むため、糖質が少なめな酸っぱい果物・ミカンなどのかんきつ類やキウイなどを選ぶようにします。乳製品は動物脂を含むため、取りすぎないようにし、生クリームなどは避けるとよいでしょう。

 ⑤減塩して薄味にする

 伝統的な和食は食塩が多く使われており、血圧を上げる原因になります。だしや薬味を使うなど味付けの方法に工夫して薄味に慣れるようにしましょう。

 これらに沿えば、和食以外の料理や味付けでも「ザ・ジャパン・ダイエット」になります。代表的な組み合わせは主食、主菜、副菜2、汁になります。これらは日本動脈硬化学会のホームページに料理のレシピを含め詳細な記載がありますので、ご参照ください(図1)。

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 2.運動は動脈硬化の薬

 運動は「魔法の薬」とも呼ばれています。運動は健康によく効く薬で、特に心臓と血管に良いことがわかっています。スポーツなどのいわゆる「運動」と日常生活の中の「生活活動」を合わせて「身体活動」と呼んでいます。身体活動は「強度」によって、低強度と中強度以上に分けられます。心臓・血管には、中強度以上の身体活動が効果的といわれています。運動には、有酸素運動(歩行と速歩)とレジスタンス運動(自分の体重を利用したスクワットやダンベルなど)があります。両者を併用することが大切です。水中運動や階段の上りなどは両者の運動の要素があります。有酸素運動は1日30分以上(途中休みを入れてもよいです)、週に3回以上。レジスタンス運動は10~15回を2~4セット、やはり週に3回以上が目安となります。詳しくは厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」をご参照ください。

 3.禁煙

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 以前もお話ししたように、喫煙は心筋梗塞などの冠動脈疾患や、脳卒中、腹部大動脈瘤、末梢動脈疾患の危険因子です。喫煙本数が増加すると、心臓血管死や突然死も増加することが報告されており、逆に禁煙すると、心臓血管死が減少することも知られています。煙に含まれる代表的な有害物質は、喫煙者(能動喫煙)だけではなく煙を吸う周りの人(受動喫煙)にも被害をもたらします。

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 次回は動脈硬化の治療についてお話します。