東の空が明るみ始め、木材を基調とした建物に優しく光が差し込む。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から11日で丸14年。大熊町のJR大野駅前に整備された産業交流施設と商業施設は15日にグランドオープンを控える。長い歳月を経て、かつての町の姿を取り戻すため、再生に向けた夜明けを迎える。
震災前、商店が並び「町の顔」としてにぎわっていた大野駅前。貸しオフィスが入る産業交流施設では、入居準備が慌ただしく進む。商業施設にプレオープンした飲食店は昼時、来店客であふれる。全町避難により、人けのなかった町が少しずつ変わろうとしている。
一方、日が暮れると施設の周辺一帯の明かりは、まばらになる。生活の営みを感じさせるような住宅の明かりは少なく、暗闇の中で街路灯や工事現場のライトがぽつぽつとむなしく光る。いまだ町域の半分で帰還困難区域が残り、居住率は1割程度と、帰還が進まない現実を突き付ける。
太平洋側に見える福島第1原発では廃炉作業が進む。昨年は溶け落ちた核燃料(デブリ)0.7グラムの採取に成功したが、燃料デブリの総量は880トンに上るとみられ、2051年までの廃炉が実現できるのか、懸念は消えない。
中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)に保管されている除染土壌の県外最終処分は期限の45年まで残り20年、解決に向けた糸口はまだ見えてこない。震災から14年、復興への光と影が混在している。