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職人の熟練の技…AIで継承 福島県、製造業10社支援へ

2025/09/21 09:30

 製造業分野で技術の次世代継承を進めていくため、県はデジタル技術を活用して県内の製造業を支えてきた熟練技術の「見える化」に取り組む。職人の高齢化などで次世代への技術継承が急務になる一方、その技術は長年の勘によるところが多く、どのようにつないでいくかが大きな課題になっている。県は、人工知能(AI)を使って職人技を言語化し、熟練技術の継承に役立てる考えだ。

 例えば菓子店では、加水の量、材料をかき混ぜる回数、火加減など、職人が長年の経験で培った技術が数多くある。ただ、製造業では「技術は背中を見て覚えるもの」との意識が根強いとされるほか、熟練者の「勘」は言葉にして伝え残すことが難しいこともあり、特に規模の小さい企業などでは継承方法が体系化されていないという課題があった。

 中小企業が多数を占める本県では、人手不足のため技術を教えるのに時間を割く余裕がないケースが多い。企業からは「定年退職や転職で今いる職人がいなくなったら、同じ物を作ることはできない」との声が県に寄せられているという。

 このため県は本年度、食品や金属製品、プラスチック製品の製造会社、窯元など10社を支援先に選び、専門家を派遣。会社の強みである「守るべき技術」を調査した上で、AIを使って自動で技術を言語化し、写真や動画も使ってマニュアルを作成する。

 10社のマニュアルは各社の技術継承に生かしてもらうほか、取り組み成果を紹介するセミナーの開催などを通じて県内で同様に技術継承が課題となっている他社にも見える化の事業を役立ててもらう考えだ。

 製造業は県内総生産の4分の1を占める本県の主要産業の一つ。急速な人口減少と少子高齢化が進む本県では今後、後継者不足に悩む製造業の増加が懸念される。県は「伝統的な技術が一度途絶えてしまうと、復活させることは難しい。製造業の競争力向上に向けて技術継承の支援に取り組んでいく」(産業人材育成課)としている。

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