【子育て応援隊】 遊びのヒント...「やってみたい」を大切に

 
学生が身近な材料で手作りした「ゆうえんち」で遊ぶ園児たち

 子どもにとって「遊び」は大切だと言うけれど、そもそも子どもにとっての「遊び」って何でしょう? 知育玩具で遊ばせた方がいいの? 今回は日々の生活の中にある「遊び」のヒントを、幼児心理の専門家に聞きました。また、間もなくクリスマス。おもちゃコンサルタントに聞いた、おもちゃの選び方も紹介します。

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 ■福島大教授 原野明子さんに聞く

 「子どもにとっての『遊び』とは、"やらされてやる"ことではなく、自分で"やりたくてやっている"こと。子どもが興味を持って取り組むことが『遊び』になり、好きで取り組むからこそ、それが体や脳、心の発達につながっていきます」。幼児心理が専門で、福島大人間発達文化学類心理学・幼児教育コース教授の原野明子さん(59)は「遊び」についてそう説明します。

231218kosodate701-3.jpg はらの・あきこ 福岡県出身。広島大大学院教育学研究科博士課程後期単位取得退学。2018年から福島大人間発達文化学類教授。

 その一例があります。11月末、福島市の福島大にある心理学・幼児教育コースの実習室を、大学近くのまつかわ幼稚園に通う子どもたちが訪れました。お目当ては、保育士や幼稚園教諭を目指す同コースの学生が手作りした「ゆうえんち」。今年はクリスマスツリーの飾りが釣れるクレーンゲーム、大きな板積み木や体育マットを組み立てたジェットコースターなど四つのアトラクションが用意され、子どもたちが夢中になって遊びました。

◆欠乏感ある方が 工夫する力育つ

 その翌日―。まつかわ幼稚園では、子どもたちが積み木や段ボールを使い、仕組みを考えながらアトラクションを再現していました。誰に指示されたわけでなく、自発的に作り始めたといいます。「子どもたちは印象に残ったことを再現したくなります。親が特別なおもちゃを与えなくても、自分で工夫して生み出そうとする。むしろ、『足りない』という欠乏感がある方が工夫する力が育ち、できた時は自信になります」と原野さん。「『やってみたい!』が実現し、好奇心が満たされると、次の好奇心が生まれどんどん遊びの幅が広がっていく。大人にとってはガラクタでも、子どもにとっては遊びになるのです」
 
◆自由にできると 思える環境用意 

 では、そんな子どもの「遊び」を伸ばすため、保護者に何ができるのでしょうか。原野さんは「子どもが『自由にやらせてもらえている』と思える環境を与えることが大切。それは親子の信頼関係にもつながっていきます」と答えます。「子どもはさまざまなことを言葉よりも体や感覚で学んでいきます。嫌なことや傷つくこともありますが、子どもがやりたくてやっている中で受けた痛みなら、自分で引き受けられます」

 さて、もうすぐクリスマス。「おもちゃにお金をかけなくてもいい」(原野さん)とは言われても、せっかくなら子どもの好奇心をくすぐるプレゼントを贈りたい。でも何がいいのか分からない―。そんな保護者に、原野さんは「まずは子どもが何に興味があるのかを普段の生活から探ってみて。その好きなものを起点に、子どもの選択肢を広げるといいです」とアドバイスします。それでも悩むなら、親自身が子どもだった頃を思い出し、好きだった物やもらってうれしかった物を選ぶのも一案だそう。「親子で好きなものが似ていることもある。それに、親が楽しそうにしている方が子どもも楽しいはずです」

■おもちゃコンサルタント 鈴木真理さんに聞く

◆成長に合わせて選ぶ 
 
 小さな子どもが楽しく遊べるおもちゃとはどんなものなのでしょうか。福島市の玩具店「木のおもちゃ ラッタ」店主で、おもちゃコンサルタントの鈴木真理さんに教えてもらいました。

231218kosodate701-4.jpg※写真=「安全なもの、子どもが工夫して遊べるおもちゃを選んでほしい」と話すおもちゃコンサルタントの鈴木さん。店内で遊んでいる短い時間でも子どもたちの成長を感じさせられることがあるそうです

 「子どもは遊ぶこと全てが生活であり、学び。遊びの時間を豊かで楽しくしてくれるものがおもちゃです」と鈴木さんは言います。選ぶときに大切なのは〈1〉安全なもの〈2〉子どもが工夫して遊べるもの―であることです。シンプルなつくりのおもちゃは、発想次第で遊び方が無限に広がります。「子どもは大人が考えつかないような方法で遊びます。それは生きていく上で大切な力。シンプルなおもちゃは、電池で動くおもちゃではできない遊びができます」

 月齢に応じて離乳食を変えるように、おもちゃも子どもの成長に合わせたものを使うといいそうです。鈴木さんによると「簡単すぎても、難しすぎても子どもは興味を持ちません」といい、遊びながら、子どもに合ったものを見つけることを提案します。

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◆親子の時間楽しむ 

 物作りが好きな子、乗り物が好きな子、きれいで小さいものが好きな子など、子どものタイプはさまざまです。「指先が器用になる」「記憶力が伸びる」など親が"効能"を狙って選んだおもちゃよりも、「楽しい!」と感じるおもちゃで遊んでいれば、「子どもは自然に伸びていく」と鈴木さん。「小さい子どもにとって無駄なことはありません。大人にとって意味がないことでも、子どもにはちゃんと意味があります」
 そして大切なのが、親の関わりです。「いくら高価でいいおもちゃでも、『与えて終わり』ではありません」と鈴木さん。親自身が面白いと思えるおもちゃを選んで、子どもと一緒に遊び、その時間を楽しむことが、「幸せなひとときになるはず」と言葉に力を込めました。

◆ゲームは「おやつ」 
 気になるゲーム機での遊びについては、鈴木さんは「デジタルネイティブの子どもたちがゲームに触れるのは、避けられないのでは」とみています。「ですが、ゲームはいわば『おやつ』。主食は『工夫して遊べるおもちゃ』です。ゲームで遊び始める年齢になるまで、いいおもちゃで遊ぶ時間を楽しんでほしいです」