小さな子どもは外で遊ぶのが大好きです。太陽の光を浴びて親子で元気に体を動かすのはとても楽しいものですが、気を付けたいポイントがいくつかあります。今回は、子どもの日焼けと虫刺され対策について紹介します。
屋外での活動は 時間や場所工夫
子どもは真っ黒に日焼けしているのが健康的、というイメージを持っている方もいるかもしれません。しかし、今はちょっと違います。現在は、子どもに適切な日焼け対策を行うことが推奨されているのです。
日本臨床皮膚科医会、日本小児皮膚科学会が子どもと保護者、保育所、幼稚園、学校の教職員向けに出した統一見解(2015年)では、皮膚が過剰な紫外線を浴びると健康にさまざまな悪影響が生じるとし、「子どもの時から適切な紫外線対策を行うことは(中略)生涯にわたり健やかな肌を保つために大切な生活習慣の一つ」と呼びかけています。
紫外線を浴びすぎると、皮膚老化(しわ、しみ)を早める、将来皮膚がんを起こしやすくなる、目の病気(白内障、翼状片など)を起こしやすくなるなどの影響があります。
この統一見解によると、紫外線は4~9月が強くなります。1日の中では午前10時~午後2時が強いため、屋外活動はなるべく紫外線が弱い時間帯に行い、強い時間には紫外線対策をするよう求めています。
曇りでも紫外線はあるので、注意が必要です。
屋外活動時の具体的な対策も挙げられており、活動時間を工夫する、日陰をつくるなど場所を工夫する、つばがある帽子をかぶったり、袖や襟が付いた服を着たりする、日焼け止め剤を上手に使う、などが紹介されています。
プールなどの水遊び時も、時間を工夫する、プールの上に天幕を張ったりプールサイドに日陰を用意したりする、ラッシュガードを着用する、日焼け止め剤を使うなどの対策が示されています。
「紫外線は必ずしも怖い物ではありません」と統一見解では述べられています。過剰な紫外線防御は子どもの成長の妨げになることもあるとし、上手な紫外線対策を促しています。
日焼け止め剤は 子ども用を選ぶ
子どもが使う日焼け止め剤はどんなものがいいのでしょうか?
統一見解では、集団生活での紫外線対策としてはSPF15以上なら十分、とのこと。PA++~+++を目安に選ぶとよいそうです。子ども用で無香料、無着色のものが望ましく、プールや海では耐水性のものが推奨されています。
米国小児科学会は、生後6カ月までは日焼け止めを使わず、帽子や日よけなどでの紫外線対策を推奨しています。
塗るときのポイントは【表】の通りです。
過度に恐れずに 外遊びの経験を
小児科・アレルギー科が専門の市川陽子医師(福島市、いちかわクリニック)は、「二十数年前までは、母子手帳に日光浴をさせるよう記載がありました。(骨をつくる)カルシウムを体に吸収させるビタミンDの活性化のために紫外線が必要とされていたのです。最近は日焼けによる皮膚などへの影響を考え、紫外線対策をする流れになっています。ビタミンDは食べ物からも摂取できます」と話します。日光浴は長時間行う必要はないといい、適度な日光浴について、「東京では夏は3分、冬は50分とされてます。これで1日に必要なビタミンDが生成されます」と助言します。
日焼けをしてしまったらどうすればいいのでしょうか。市川医師は「ぬるめのシャワーを浴び、水疱(すいほう)は皮をむかず保湿剤などで肌を守るとよいでしょう。ひどく日焼けをした場合は皮膚科や小児科を受診してください」と話しています。
「必要最低限の紫外線対策はやっていただきたいです」と市川医師。「しかし紫外線を恐れるあまり子どもの外遊びが制限されてしまっては、健やかな成長の妨げになります。適切に日焼け止めを使いながら、必要な外遊びをどんどん体験してください」と、本県の子どもたちの夏遊びを応援しています。
※写真=いちかわクリニック 市川陽子医師
長袖長ズボンで 虫よけ剤を使う
外で遊ぶ際には、紫外線対策のほかに虫刺され対策も気になります。
市川医師によると、虫に刺されるとかゆくてつらいだけでなく、かいた部分からばい菌が入り化膿する場合があります。毒のある虫なら抗生剤が必要になることもあるそうです。症状がひどい場合は皮膚科や小児科の受診を検討しましょう。
「虫刺されを避け野山で遊ぶことを制限する必要はありません。刺されない対策をしましょう」と市川医師。やぶなどに行くときは長袖、長ズボンを基本とし、虫よけ剤を使用します。
「虫よけ剤は、子ども用と記載があるものを選びます。虫よけスプレーなどは直接子どもの肌に付けるのではなく、肌に合う保湿剤を塗った上から使うと皮膚トラブルを避けられます。保湿剤、日焼け止め、虫よけの順に使ってください。衣服にも虫よけスプレーをするとよいでしょう」と市川医師。
キャンプや海など屋外レジャーの際は、虫刺されの薬や化膿止めの薬も持って行くと安心です。
安全な外遊びのために、市川医師は、手の爪を清潔にしておく、長い髪はすっきりまとめておくことも勧めています。