【子育て応援隊】不安持つ親に寄り添う 伊達市、就学前の支援

 
幼稚園で園児と一緒に遊びながら、生活の様子を観察する相談支援員(写真の一部を加工しています)

 小学校の入学を前に、県内各地で学校説明会が開かれています。親としては「もう小学校入学か」という感慨深さと、「うちの子は学校でしっかりやっていけるのかな?」とちょっと心配な気持ちもあるかもしれません。伊達市では、こうした不安を持つ親に寄り添おうと、市教育委員会(市教委)が従来より1年早く年中児クラスからの就学支援を行う、県内初の取り組みが行われています。

 伊達市が県内初、年中児から対応

 昨年12月下旬、伊達市の幼稚園の年中児のクラスを、伊達市教委の相談支援員2人が訪れました。いずれも定年退職した元小学校教員で、エプロン姿。園児たちと楽しく遊びながら、あいさつや返事、着替えができるか、人の話をしっかり聞いているか―など、生活の様子を観察します。後日開かれる年中児の保護者向けの「子育て支援相談会」で参考にするための活動です。

 この相談会は昨年度まで、年長児の保護者向けに就学時健康診断(就学時健診)に合わせた「早期教育相談会」として開催されてきました。近年は子育ての悩みや就学に向け不安を抱く保護者が増えてきたため、本年度から年中児の保護者を対象にした相談会も始めました。

 相談会の参加は希望制です。支援員は、申し込みがあった保護者の子どもが通う幼稚園やこども園、保育所などで行動を観察し、相談会で小学校生活に必要な生活習慣や態度、技能などについてアドバイスしています。

 市教委の主導で学校の負担削減

 この取り組みは、同市教委の「すこやか伊達っ子 子育て・就学相談支援事業」の一つです。これまで、市教委が就学前の子どもと保護者に関わる機会は、就学前年度の就学時健診だけしかありませんでした。

 就学に向けた相談会を年中児に拡大した理由は、近年、市内の小中学校で増えている登校渋りや不登校、ゲーム依存による昼夜逆転の児童生徒の支援につなげるためです。

 同市教委によると、これらの児童生徒の背景には、ゲームやスマートフォン、タブレットなど「映像メディア」の長時間視聴による生活習慣の乱れや、発達障害の可能性がある場合があるといいます。このため、就学前の早い段階から行政が適切なサポートができるよう、事業を見直しました。

 新たな事業の枠組みを作ったのは、元小学校長で、定年退職後に市教委の相談支援員となった佐々木義通さん(64)。市内の児童生徒の状況から「就学前年度の支援では遅い。就学前の早いうちから行政が関わって、支援することが必要」と考えました。

 学校現場の現役の先生に任せるのではなく、市教委が主導することも、この事業の特徴の一つ。「市教委が主導することで、学校現場の負担削減や教育の質向上につながる」と、佐々木さんは見ています。現在、市教委の相談支援員は佐々木さんを含めて4人。いずれも元小学校教員で、管理職や低学年の担任の経験があります。相談支援員たちは、市内の小中学校で教職員への助言や指導も行っています。

 知能検査の後に選ぶ時間を確保

 事業では、発達障害を含めた特別な支援を必要とする子どもとその保護者の支援にも力を入れています。その一つとして、年長児を対象に行っていた集団知能検査の実施時期を、4カ月早めました。

 これまでの検査は秋の就学時健診で行われていました。結果により「特別な支援が必要」と勧められた子どもの保護者は、小学校で特別支援学級や通級指導教室を選ぶか、通常学級を選ぶか、わずか2週間程度で決めなければいけませんでした。

 昨年度から知能検査の実施時期を早めたことにより、保護者が子どもにとって最適な就学の在り方をじっくり考える時間の余裕が生まれました。

 佐々木さんは「すぐに事業の成果は出なくとも、いずれ市全体の教育の質が上がり、子ども自身や親の"困り感"が少なくなっていく、と考えています。市教委が早期に関わることで、学校を、誰もが安心して学べる場にしていきたいです」と話しました。

 早期から関わり効果的な支援に

 伊達市教委の「すこやか伊達っ子 子育て・就学相談支援事業」には、小児神経学が専門である福島医大ふくしま子ども・女性医療支援センターの横山浩之教授(63)が「伊達市市政アドバイザー」として関わり、支援の在り方について専門的な視点で助言しています。

 横山教授は「特別な支援を必要とする子どもは早期発見・早期介入すると、本人が持っている能力を発揮しやすくなります。就学前の早期から市教委が関わることで、そうした子どもへのより適切な支援につなげることができます」と、早い段階での就学支援の必要性を指摘しています。

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 「読み終えた絵本」お寄せください

 福島民友新聞社と福島中央テレビは3月23、24の両日、郡山市のビッグパレットふくしまで「絵本おゆずり会」を開きます。同会場で20日から24日まで開催される「中テレ祭り」に合わせたイベントです。おゆずり会に提供していただける絵本を3月10日まで募集しています。

 子どもが成長して読まなくなったり、捨てられずに自宅でずっと保管したりしている絵本にまた活躍してもらおうと、おゆずり会を企画しました。

 対象は絵本、児童書、図鑑など、子ども向けの本です。回収場所は、福島民友新聞社が本社(福島市)、郡山総支社、いわき支社、若松支社です。福島中央テレビは本社(郡山市)、福島支社、いわき支社、会津支社(会津若松市)で行います。

 回収時間は平日午前10時から午後5時まで。絵本は各受付にお渡しください。

 集まった絵本は、中テレ祭り会場で希望する来場者にお譲りします。会場では募金を募り、東日本大震災ふくしまこども寄附金に全額寄付します。

 問い合わせは福島民友新聞社企画推進部(電話024・523・1459)、福島中央テレビ営業部(電話024・923・3361)へ。

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