(4)私の「良い場所」探し 諦めなくてよかった!

 
2018年に初めて福島に来ました。この写真はその時に鶴ケ城から撮りました。まさか4年後に福島に住んで、赤べこのイラストを描いて、毎月日本語でコラムを書くとは。人生は面白いですね!

 Bonjour、またエミリーです! 日本で生活を始めて今月で11年になります。雨が降っていた2011年4月29日にパリから出発して、30日に東京に着きました。22歳でした。

 原発事故の直後だったので、両親などからは日本へ行くことを反対されました。でも人生は1度だけ。私は自分の心が決めたことを変えず、自分で選んだ道を進んでいきたいのです。家族を心配させましたが、彼らは離れていても応援してくれ、日本に遊びに来てくれました。何よりも感謝しています。

 この11年間、いろいろなことがありました。一番難しかったのは、日本語を覚えることです。来日前に知っていた日本語は「ありがとう」「まさか」ぐらい。日本では英語でなんとかなると思っていたのです。

 ところが、13年に自動車運転免許を英語コースで取得した時、スタッフの日本語が「おめでとうございます」しか分からず...。やはり日本語が必要だ、と感じ、勉強を始めました。

 本屋さんで「カチカチ山」の本を買ってひらがなを覚えようとしたのですが、字を覚えるより「右から左に、上から下に」読むルールの方が難しかったです。日本語学校に通い、14年ごろから少し会話ができるようになりましたが、今もあまり自信がありません。

 日本の生活に慣れるまでも時間がかかりました。銀行、買い物、病院など、ほとんどのやり方が違うので、日本で新しい人生を学び直したのです。

 東京に2年間住んでいましたが、「この街は私の『良い場所』ではない」と、すぐに分かりました。横浜に引っ越しても、この「ぴったりではない」感じが続きました。その時から私の「良い場所」探しが始まりました。富士山の近く、神奈川、広島、長野、奈良、大阪などで探しました。でも、いつも、私の心が「ここ」と決めませんでした。

 そうしているうち、18年に旅行で福島に来たのです。

 来日後、私の中には「福島=危険」なイメージがありました。福島のことを知らずに嫌がっていました。考え方がまだ幼かったのだと思います。

 来日から7年たったころ、フランス語を教えていた生徒さんが福島市出身と知り驚きました。でも、なぜ自分が驚くのかを、よく考えました。「私は福島のことを何も知らないのに、なぜ嫌がるの?」と。

 考え方が少し大人になったのかもしれません。自分の目で福島がどんなところなのか、確かめたくなりました。そして、生徒さんから福島のおすすめの場所を教えてもらい、初めて訪れました。その続きは、皆さんが知っていますね。福島が好きで、好きで、移住したのです。

 あぁ、ようやく私の「良い場所」が見つかりました。

 これまで、つらいこともありました。悲しい、不安な時が多かったです。ですが、日本に来てよかったと思います。いろいろな人と出会えて、話して、笑って、何よりも楽しかった!

 諦めなくてよかった。頑張って、失敗して、足が滑る時にいつも近くで誰かが手を差し伸べてくれました。

 次の11年間、どんな未来が待っているのかな。楽しみにしています!

2015年の横浜の空2015年の仕事帰りに横浜の空で「龍」を見ました。日本に来て小さな幸せがいっぱいありました。これからも!

 エミリー イラストレーター。東京などで語学講師として活動し2021年2月から県内に移住。趣味は散歩。猫好き。自身のサイト「メリエマリス」で、赤べこのイラストや県内スポットの紹介文とイラストマップなどを公開。オリジナルグッズも多数展開中。