【知らなかった方言】「むじる」覚えて得意に

 

 前回の「方言だと思わなかった言葉」に続き、今回は「意味が分からなかった方言」にまつわるエピソードを紹介する。

 まずは複数寄せられた、会津地方の「むじる」。

 「新米巡査として会津若松署に赴任した際、市民が『むじって』という言葉をよく使っていました。全く意味が分からなかったのですが、『曲がって』という意味だと知り、それからは私も観光客らに『そこの角をむじって』などと言って道案内をしていました。意味を尋ねられると、得意になって解説したものです」(福島市)。

 「むじる」を方言辞典で調べると、「曲がる」を意味する会津地方の言葉として掲載されている。一方、「まがる」は「おじぎする」という意味の同地方の方言だと書かれている。会津で「まがる」と言われたら、どちらの意味なのか迷ってしまいそうだ。

 仕事中のエピソードをもう一つ。

 「県外から福島に来て4~5年のころ、洋服店で働いていた。スラックスの試着をしていた年配の方に『するびんねようにしてくんちぇ』と言われ、まるで外国語のようだった」(福島市)。「するびる」とは、洋服の裾などが床に着いて引きずってしまう様子を表す方言だ。

 以前、福島民友別冊「タッチ」に連載中の漫画エッセー「ただいまふくしま」に、「きどころね」の話題が登場した。うたた寝のことを指し、今風に言えば「寝落ち」だろうか。編集を担当した記者は、こたつでついうとうとしてしまい「きどころねしてねで(しないで)布団で寝な」と親から注意されたことを懐かしく思い出したが、調査すると、この言葉を知らない人が意外と多かった。

 家族から言われたことといえば、こんな思い出も。

 「子どものころ、じいちゃんばあちゃんに『このー、げすぬけぇー』と言われたことに『??』」(西郷村)。「げすぬけ」は、ドアや扉の閉め忘れや半開きになっていることを指す。この季節、扉を閉めずに部屋を飛び出していった孫に、祖父母がこたつに入りながら呼び止めている様子が目に浮かぶ。

 個人的には県北に来て「たれか」が分からなかった。「面倒くさがり、怠け者」という意味で、「たれかして(面倒くさがって)」などと用い、世代を問わず多くの人が使っている印象だ。そして、郡山市では同じ意味のことを「くさし」と言っていた。

 「まちぽい」衝撃

 「まちぽい、まじっぽい」も複数寄せられた。「初めて聞いた時の衝撃が大きかった方言は、スキー場でゴンドラに乗っていた時に船引出身の知り合いが言った『まちぽい』です。眼下に見える町のことかと思ったら、まぶしいという意味でした」(郡山市)。

 ほかにも「がおる、がおった(病気で衰える)」「くらつける(たたく)」「ずない(大きい)」「たっぺ(氷)」などが、知らなかった県内の方言として票を集めた。

 住む町に愛着

 方言を知れば知るほど、住む町に親しみを感じられる。今まではほかの地方に行くと福島弁を必死に隠していたけれど、これからはどこに行っても堂々と使えるようになりたい。(佐藤香)