【ご当地パン(上)】多彩な定番「推し」続々

 
 県内のザ・ご当地パンといえば、筆頭は郡山市の「クリームボックス」だろう。小ぶりで厚みのある食パンにミルク風味のクリームがたっぷりのっている。1976(昭和51)年に同市の「ベーカリー ロミオ」で誕生し、当初は同店独自の商品だったが、その後市内の各店で製造されるようになり、今では県外にも知られる名物になった。最近はミルク風味のほかにもチョコレート味やカフェオレ味など各店で独自色を出している。

ロミオ(郡山市)のクリームボックス
(ロミオ(郡山市)のクリームボックス)

 福島市からは、たけだパンの「サラダパン」を推す声が集まった。常務の武田慎司さん(46)によると「昭和40年代前半の創業当時から作っている」という、50年以上続くロングセラー商品だ。伝統のおいしさの秘密は、マヨネーズから自家製の、全て手作りのポテトサラダだ。これを少し甘みのあるパンで挟む。

たけだパン(福島市)のサラダパン
(たけだパン(福島市)のサラダパン)

 サラダパンは同店のほかにも市内の複数のパン店で製造しており、市民にとっては身近な存在。そのため「サラダパンが福島市以外では売っていなくて驚いた」という声もあった。

 「ご当地パンといったら、あの町の油ぱん一択です」(川俣の三枚目さん)。これは、川俣町の創業75年の老舗、清川製菓製パン店が作る「油ぱん」。「こめ油」を使って作るため油っぽくなく、もっちりした食感が特徴だ。中に詰めたこしあんは、幅広い世代の口に合うよう、甘さを抑えてさっぱりと仕上げている。

清川製菓製パン店(川俣町)の油ぱん
(清川製菓製パン店(川俣町)の油ぱん)

 砂糖シャリッと

 会津からは「バターパン」がノミネート。「ふわふわのバタークリームに、シャリシャリの砂糖がサンドされていて、また食べたいと思う」(湯川村・ヨキボスガブリエルさん)という声に代表される。

 バターパンは数十年前、油脂メーカーが研修会で会津のパン店に提案して誕生したとされる。会津若松市の焼きたてパン工房「モックモック」では「ばたぁぱん」の愛称で親しまれている。同店の林陵平さん(37)によると、マーガリン、バターをホイップし、最後に砂糖をまぜることでシャリシャリっとした独自の食感が生まれる。会津で扱っているパン店はだいぶ減ったという。林さんは「少し焼いてもおいしいですね」と教えてくれた。

モックモック(会津若松市)の「ばたぁぱん」
(モックモック(会津若松市)の「ばたぁぱん」)

 そして、南相馬市民の熱い支持を集めたのが、はらまち製パンの「よつわりパン」だ。丸いパンに縦横の切り込みが入り、中にはこしあんとホイップクリーム、中央にはチェリーの砂糖漬けがのっている。

 60年ほど前、現在の代表、佐藤敬一さん(67)の父が「ケーキのようなパンを」と考案した。当初は「フラワーパン」という名前で売り出したが、お客さんからは「四つに割れるパン」などと呼ばれることが多く、「よつわりパン」と名前を変えた。「お客さんが付けてくれた名前です」と佐藤さん。

はらまち製パン(南相馬市)のよつわりパン
(はらまち製パン(南相馬市)のよつわりパン)

 各地の定番商品を紹介してきたが、県内のご当地パンはこれだけじゃない。「ふくしま初夏のパン祭り」は次回に続きます!(阿部裕樹、福田正義、佐藤香)